ゴードン・マレーも所有 GSMフラミンゴ 1500 ケント・エンジンの黄色いバナナ 前編
公開 : 2022.12.17 07:05
眩しいイエローに塗られたGSMフラミンゴ。南アフリカで誕生した小さなグランドツアラーを、英国編集部がご紹介します。
小型軽量な南アフリカのグランドツアラー
南アフリカでは、欧州メーカーのモデルに大きなエンジンを組み合わせることを好む傾向がある。フォード・カプリにV8エンジンを載せたり、BMW 3シリーズへ333iというグレードが設定されたこともあった。
以前にAUTOCARでご紹介した、3.0L V6エンジンのフォード・タウヌス 20M RSもその1つだろう。土地が変われば、好みも変わるものだ。
一方で欧州本土では生産を終えたモデルが、延々と作り続けられることもある。1974年に発売された初代フォルクスワーゲン・ゴルフは、2009年まで南アフリカのショールームに並んでいた。
必ずしも、他の市場で通用するアイデアではないかもしれない。それでも、グレートブリテン島の中南部、コッツウォルズ地方で生き延びたイエローの小さなクーペが、英国人の筆者にとっても少々魅力的に映ることは事実だ。
かつての南アフリカには、モータースポーツで培った技術を活かした、GSM(グラス・スポーツ・モーターズ)という小さな自動車メーカーが存在した。オースチン・ヒーレーと競い合うべく作られた、ダートというスポーツモデルで事業をスタートさせた。
続いて開発されたのが、今回ご紹介するフラミンゴ。小型軽量なグランドツアラーとして、欧州のモデルと渡り合えそうな実力を備えていた。販売不振から経営難に陥り、1965年に消滅することがなければ、われわれの記憶へもう少し刻まれていたただろう。
左右へ分断されたリアウィンドウ
別名デルタとも呼ばれた、GSMダートは短期間ながら英国でも生産が行われ、欧州市場ではある程度の認知度を得ていた。それを追い風に、需要を探るように誕生したのがフラミンゴだ。
英国の販売部門は、雨の多い地域ではクローズドボディの方が人気を得るだろうと考えた。ダートで得た4年間の経験を通じて、次期モデルに取り組もうという勢いがあった。ライバルに掲げていたのはポルシェ356で、理想は高かった。
技術者はゼロから新モデルの設計を進めた。ところが、フラミンゴが英国で正規に販売されることは最後までなかった。
フラミンゴのリアフェンダー上には、1960年代初頭に流行したテールフィンが与えられている。そんなスタイリングで最大の特徴といえるのが、左右へ分断されたリアウィンドウ。中央が峰のように立ち上がり、印象的な後ろ姿を構成している。
GSMの従業員の間でも、リアガラスを仕切る3本目のテールフィンには異論が出たという。だが単に様式的なものではなく、構造的な意味合いが存在していた。当初デザインされたテールエンドは、ブレッドバンと呼ばれるコーダトロンカ・スタイルだった。
今回ご登場いただいたフラミンゴは、最終仕様となった1964年式の1500。モデルの生産は1961年に始まり、途中で改良が施されている。現在のオーナーはグレン・ロクストン氏で、「黄色いバナナ」という愛称で呼んでいるそうだ。