ゴードン・マレーも所有 GSMフラミンゴ 1500 ケント・エンジンの黄色いバナナ 前編
公開 : 2022.12.17 07:05
開発段階ではV6エンジンが想定されていた
エンジンは、当初はドイツ・フォードが生産していた1760ccのタウヌス用4気筒だった。数年後に、フォード・コルティナ用として登場した1498ccのケント・ユニットへ置換されている。
英国では1959年に生産が始まっていたケント・ユニットは排気量が小さかったものの、高回転域まで軽快に吹けあがった。軽量で最高出力でも勝っており、バージョンアップといえる内容だった。それでも、GSMの技術者は性能に満足していなかった。
開発段階では、フォードのエセックス・ユニットかケルン・ユニットというV6エンジンが想定されていたのだ。しかし南アフリカでの生産がキャンセルになり、フラミンゴには不必要に大きなエンジンルームが残されてしまった。
ケント・ユニットにクロスフロー仕様が追加されたのは1966年。その能力の高さから、モータースポーツ界やキットカー・メーカー、少量生産のスポーツカー・ブランドから一気に注目が集まった。
グレンの黄色いバナナでも、初代エスコートに搭載されていた1599ccのケント・ユニットへ後年に交換されている。ハイテクな4気筒エンジンとはいえなかったが、フォードにとっては新しい主力ユニットだった。
英国生まれの馴染み深いエンジンだということは、今でも始動直後からすぐにわかる。少々乱雑に目覚め、振動は小さくない。ステアリングホイールやシートベースを通じて、ピストンが上下する動きが伝わってくる。
走りは後輪駆動のBMCミニのよう
公道を走らせれば、レスポンスの良さが光る。やや上質さに欠けるとはいえ、意欲的に力強くフラミンゴのボディを前進させる。車重は739kgと軽く、実際の速度はそこまで高くなくても、走りには活気が溢れている。
ドライビングポジションは路面にお尻が付きそうなほど低く、エンジンサウンドは荒々しい。それらが、スピード感を増長している。
ドライビング体験を濁しているのが、コルチナ由来のトランスミッション。1960年代のフォードらしく、1速と2速のギア比が極端にショートなのだ。しかし、短いシフトレバーのおかげで小気味よく次のゲートを選べる。慣れれば素早くシフトアップできる。
交通量の少ない裏道は、スリル満点の場所になる。まるで後輪駆動のBMCミニのよう。
フロント・サスペンションには、技術者のアレック・イシゴニス氏が開発したオリジナル・ミニと同じ、ラバーコーンが用いられている。フロントタイヤが跳ねるように動く挙動や、傷んだ路面の状態が伝わってくる乗り心地は、実際に似ている。
アスファルトが剥がれた穴を通過すると、激しい振動に見舞われる。そのかわり、ステアリングホイールの操作に対する反応はダイレクト。身軽そうに、フラットにコーナーを縫っていく。
アスファルトの状態が酷くなければ、フラミンゴの身のこなしは鮮やか。シャシーのバランスは高い。そのまま気張りすぎると、アンダーステアが出て大きく外へ膨らんでしまうけれど。
この続きは後編にて。