オールシーズン・グランドツアラー メルセデスAMG SL 55へ試乗 完璧なプロダクト

公開 : 2022.12.08 08:25

プラットフォームから生まれ変わった新型SL。英国編集部が475psで四輪駆動の55を一般道で評価しました。

アルミ製プラットフォームを新開発

最新のR323型メルセデスAMG SLと、先代のR231型がどのように異なるのか、詳しく説明すると非常に長くなりそうだ。何しろ、広報用資料の文章は2万単語に及ぶ。

かいつまむと、モデルチェンジの趣旨は2シーターでスポーティなハイエンド・ツアラーから、よりアグレッシブでパワフルなモデルへ刷新すること。ポルシェ911 カブリオレやタルガから、ユーザーを引っ張ってくる目的があるようだ。

メルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス(英国仕様)
メルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス(英国仕様)

新しいSLは、生まれながらのAMGになった。それを叶えるため、まったく新しい軽量なアルミニウム製プラットフォームが開発されている。

2011年以降のSLはアルミニウムを中心に構成されてきたから、驚くような事実ではないかもしれないが、ボディ剛性は大幅に向上したという。もともと、R231型も軟弱な骨格ではなかったけれど。

このプラットフォームが与える動的能力への影響は、間違いなく大きい。メルセデスAMG GTの次期モデルも、このハードウエアを利用することになる。

新しいSLの開発を進めたのは、ドイツ・アファルターバッハに拠点を置くAMG部門。前輪用のドライブシャフトと後輪操舵システムが与えられ、動力性能を強化しつつ、コーナーでの敏捷性を引き上げている。

ルーフはフォールディング・ハードトップではなく、数世代ぶりに軽量なファブリック・ソフトトップへ戻された。実用的なリアシートも獲得している。英国価格はAMG SL 55で14万7475ポンド(約2448万円)からとなる。

性格にマッチする豊かな動力性能

既に英国編集部では、最高出力585psを発揮するAMG SL 63へ北米で試乗している。場面によっては運転へ夢中になり、長距離をいとわない快適性に惹き込まれた。乾燥した陽気と滑らかな路面であれば、間違いなく期待に応えてくれる。

それでは、英国の一般道ではどんな印象を与えてくれるのだろう。天候が安定しない冬の英国に伸びる、荒れた路面では異なって然るべき。今回試乗したのは、AMG SL 63より穏やかなAMG SL 55でもある。

メルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス(英国仕様)
メルセデスAMG SL 55 4マティック+ プレミアム・プラス(英国仕様)

少なくとも、掘り出し物とは呼べない英国価格だとはいえるだろう。スペック上では速いポルシェ911 カレラ4 GTSを購入できる金額で、フォルクスワーゲンUp! GTIを注文できるお釣りも付く。

最高出力は500馬力台を期待するかもしれないが、AMG SL 55は475ps。充分に強力ながら、豪腕級のAMGパワーとまではいえない。

だとしても、AMGが手掛けた4.0L V型8気筒ツインターボエンジン、M177型ユニットがAMG SL 55のドライビング体験の中心にあることは間違いない。僅か2000rpmから71.2kg-mの最大トルクが湧出し、そのたくましさには唸らされる。

ほぼすべての速度域で、好きなギアを選べる。V8エンジンはターボラグが皆無に近く、アクセルペダルを倒した瞬間に突進し始める。豊かな動力性能は、グランドツアラーの性格とも良くマッチする。

記事に関わった人々

  • リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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