ルノー・メガーヌE−テック・エレクトリック 詳細データテスト 乗り心地上々 ステアリングに難あり

公開 : 2022.12.03 20:25  更新 : 2023.01.04 23:46

意匠と技術 ★★★★★★★★★☆

ルノーメガーヌといえば、すっかりおなじみの車名だろう。エンスージアストでなくても、その名が示すものは思い浮かべられるはずだ。それでも、続くミドルネームにはまだ混乱を覚える部分があるはずだ。

ルノーがE−テックの名をはじめて使ったのは数年前で、そのときはフルハイブリッドもPHEVも含めたハイブリッド車に与えられた。たとえば、販売中のメガーヌのPHEVは、メガーヌE-テックと銘打たれている。英国では販売終了したが、今でも現役のマーケットも存在している。

ボンネットの下は、モーターやインバーター、ECUやエアコンなどのハードウェアで埋め尽くされている。フロントトランクなど望めない空間だが、アクセスしにくい積載スペースを鼻先に設けなくても、リアのラゲッジルームに十分な容量がある。
ボンネットの下は、モーターやインバーター、ECUやエアコンなどのハードウェアで埋め尽くされている。フロントトランクなど望めない空間だが、アクセスしにくい積載スペースを鼻先に設けなくても、リアのラゲッジルームに十分な容量がある。    MAX EDLESTON

そうなると、この名前が新型車にとってちょっとばかり不都合なものになる。というのも、今回のメガーヌE-テックは以前のモデルとはまったく関係のない、全面新設計だからだ。

新しいメガーヌE-テックは、日産アリアとともに、ルノー−日産が新開発したCMF−EVプラットフォームを用いる最初の商品群に属する。これはある意味、フォルクスワーゲンのMEBなどに続くものだ。フラットな大型バッテリーパックをフロアに配置し、安価なモデルは1モーター、高価なモデルは2モーターを使用している。

しかし、そうした他社のEV専用プラットフォームと大きく異なる点もある。メインの駆動用モーターがフロントに搭載され、前輪を駆動するのだ。もっとも、現時点ではこのメガーヌに4WDは存在しないが、リアにモーターを追加できることは、アリアが証明している。

さまざまなサイズのバッテリーにも対応できるが、英国仕様はシンプルな展開で、60kWh・217psの1タイプのみ。ほかのマーケットに投入されている40kWh仕様は導入されていない。

ルノー曰く、前輪のみを駆動するのはもっとも効率的なのだとか。まず、リアにモーターを配置しなければ荷室の深さが取れる。さらに、前後に通すケーブルが不要になるので、重量増加や複雑化も防げる、というわけだ。

これはたしかに一理ある。というのも、実測1688kgというウェイトは、以前に計測したクプラボーンより100kg以上軽いのだ。もちろん荷室容量は上回るし、室内スペースへの悪影響も抑えられている。リアにモーターを積んだからといって、フロントに本格的な積載スペースを設置しているのはテスラくらいのものだ。

寸法的には、クプラ・ボーンやキア・ニロEVよりコンパクト。ボーンより10cm、ニロより20cmもショートで、全高もその2台よりだいぶ低い。全般的にこれに近いサイズなのは、MG 4だ。

20インチの大径ホイールと低いルーフライン、短いが明確に存在するボンネットとショートオーバーハングが相まって、ライバルの多くよりルックスはダイナミック。デザインにはひとによって好みがあるだろうが、われわれはこのメガーヌと過ごすうちに、ほかのたいていのクルマより好意的に思うようになった。

おそらく、このデザインは多くのユーザーを惹きつける主な理由となるはずだ。これまでデザインを理由にルノー車の購入を思いとどまっていた層さえ、取り込むことになるかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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