世界18台限定の高級クーペ ベントレー・バトゥール 欧州で実車走行テスト始まる

公開 : 2022.12.05 18:05

購入者によるパーソナライズも豊富

ミントは、ベントレーにふさわしいデザインとして、多くの高級車メーカーが掲げる「筋肉質」な要素ではなく、次の3点をあげた。

1つ目は、「休む獣のような姿勢(resting beast stance)」と呼ばれるもの。バトゥールにはいわゆるくさび状のデザインがなく(「シャベルのような形のクルマが多過ぎる」とミント)、後ろ足の上に座る獣のように見せている。

欧州でテスト走行を行うベントレー・バトゥール
欧州でテスト走行を行うベントレー・バトゥール    ベントレー

2つ目は「アップライト・エレガンス(upright elegance)」。フロントグリルを現代風にアレンジし、直立させることで、頼もしい表情と力強いスタンスを与えることができるという。

3つ目は「エンドレス・ボンネット(endless bonnet)」だ。ミントは次のように語っている。「長いボンネットは、高級車において権力と名声の証となります。バトゥールのクリーンなフォルムの中で、唯一のアクセントとなる要素です。また、視覚的な質量をリアに移動させ、リアアクスルに座っているような印象を強め、ハンチに力強さを与えています」

購入者によるパーソナライゼーションの幅広さも特徴の1つとされる。エクステリアだけでなく、インテリアのあらゆる部分を好みに合わせてカラーリング、トリミングすることが可能だ。シート表皮は本社工場に近いスコットランド産のレザーで、イタリア産に比べて輸送距離が短いため低炭素と言われている。また、耐久性に優れたスエード調の素材「ダイナミカ」も用意されている。

内装材には天然繊維複合材など幅広い種類の複合材が用意され、ダッシュボードのパネルにはW12エンジンの音の周波数が描かれる。フロアマットはリサイクル糸を使用したもので、ベントレー初の試みだ。

マリナー部門を率いるポール・ウィリアムズは、1台1台のパーソナライズのレベルが高いため、生産には「数か月」かかるだろうと述べている。

新時代を導くデザイナー

ベントレーのデザイン責任者アンドレアス・ミントは、フォルクスワーゲン・ゴルフからブガッティEB110、アウディQ8アウディeトロンGTまで、あらゆるデザインを手がけてきた。ベントレーとの関係は、フォルクスワーゲン・グループにジュニアデザイナーとして入社後すぐに始まっている。

「2003年のジュネーブショーで発表されたミドエンジンのコンセプトモデル、ベントレー・ユーノディエールのデザインに携わりました。その年はベントレーにとって大きな1年となりました。ユーノディエールを発表し、ル・マンで優勝し、女王陛下へリムジンを納車したのです」

ベントレー・バトゥール
ベントレー・バトゥール    ベントレー

ユーノディエールは単なるショーカーに終わったが、円形ヘッドライトや丸みを帯びた個性的なフォルムなど、一部のデザイン要素はコンチネンタルGTに影響を与えたと彼は考えている。

2021年に現職に就いたミントは、カーボン・ニュートラルを目指すベントレーの次世代モデルのデザインを導く立場にある。ベントレーの新時代のプロローグであり、W12エンジンのエピローグとも言えるのが、新型バトゥールである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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