乗り心地は上級サルーン並み フォルクスワーゲンID.バズへ試乗 2024年にはGTXも

公開 : 2022.12.14 08:25

カリフォルニアと似ている操舵感や減速感

インテリアデザインは全体的にシンプル。ドライバーの正面には小さいメーター用モニターがあり、ダッシュボードの中央には殆どの車載機能のインターフェイスになる、インフォテイメント用のタッチモニターが据えられている。

ステアリングホイールのスポークにはタッチセンサーが並び、ステアリングコラムの左右にはレバーが伸びる。従来のフォルクスワーゲンでは、右側レバーはワイパーのスイッチだったが、ID.バズでは「PRND」を選択するギアレバーになった。

フォルクスワーゲンID.バズ・スタイル(英国仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ・スタイル(英国仕様)

ワイパーのレバーは左側に移った。日本車では一般的な位置といえるが、欧州車に慣れてきた人は初め間違いそうだ。

英国の一般道を走らせてみると、従来のフォルクスワーゲン・カリフォルニアと似ている部分があることに気が付いた。比較のために、筆者が所有する1台と乗り比べてみたのだ。

ステアリングホイールの重み付けやレシオ、アンダーステア傾向でジェントルな反応などは特に近い。ブレーキペダルを踏んだ感覚や、発生する制動力も似ている。

ただし、ID.バズではブレーキペダルのストロークが長い。回生ブレーキから摩擦ブレーキへの移行時には、僅かな段付きも感取される。

ドライビングポジションは高めで、運転席からの視界は良好。ステアリングの印象も良く、全長4.7mを超えるボディでありながら、扱い難さは感じにくい。

上級サルーンのように落ち着いた乗り心地

従来のカリフォルニアと比較すると、多くの面で進化を感じる。路面の細かい入力を巧みに吸収し、乗り心地は良好。シャシーは引き締まった印象ながら、減衰力特性が煮詰められており、荒れた路面でも上級サルーンのように車内は落ち着いていた。

明確な振動が伝わってくるのは、大きな凹凸を通過した時程度。それでも、充分に角は丸められた印象だ。

フォルクスワーゲンID.バズ(欧州仕様)
フォルクスワーゲンID.バズ(欧州仕様)

最高出力203psで得られる瞬発力に不満はない。0-100km/h加速は10.2秒で、ミニバンとしては充分だろう。想像以上に速く走れる。

他方、ID.バズ・カーゴではパワートレインなどのメカニズムは変わらず、ホイールサイズが小さくなる。タイヤのサイドウォールが厚いぶん、低速域での乗り心地は若干マイルド。内装が簡略化されているため、車内はミニバン仕様より少しうるさい。

航続距離をフォルクスワーゲンは415kmと主張するが、厳しく算出したもののようだ。今回の試乗では、フル充電で497km走れるとメーターパネルに表示され、やや積極的に運転した結果でも430km近くに届いた。

フォルクスワーゲン・カリフォルニアは、欧州のファミリー層から確かな支持を集めてきたミニバンだ。新しいID.バスは一層高い水準で仕上げられており、これまでと変わらぬ支持を得ることだろう。価格はいささか張るけれど。

フォルクスワーゲンID.バズ・スタイル(英国仕様)のスペック

英国価格:6万1915ポンド(約1027万円)
全長:4712mm
全幅:1985mm
全高:1937mm
最高速度:144km/h
0-100km/h加速:10.2秒
航続距離:415km
電費:5.4km/kWh
CO2排出量:−
車両重量:2502kg
パワートレイン:AC永久磁石同期モーター
駆動用バッテリー:77.0kWh(実容量)
最高出力:203ps
最大トルク:31.4kg-m
ギアボックス:シングルスピード

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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