デンツァ
公開 : 2014.09.01 23:30 更新 : 2015.06.16 17:03
■どんな感じ?
デンツァの内装には高級感がある。これこそが他の中国製の電気自動車と立場を異にする点だ。
中国は南部の深セン市にあるBYD自動車の工場にて組み上げられ、低価格戦略をもって中国の電気自動車市場をリードしようと言うのが主な目的なのだが、それだけではなくダイムラーが舵を切った外装デザインなど、プレミアム感を与える戦略にも抜かりがない。
真横から見ればCピラーの扶壁がハッチバックに見えるけれど、斜め後ろから見れば中国で受け入れられやすいノッチバックになっている。
いざ乗り込めば、シートのサポート性は希薄ではあるがアップライトなポジションのおかげで視界の広さは充分。後部座席に乗り込んでも2880mmのホイールベースのおかげで膝が前座席に閊えることも皆無だ。
液晶パネルを採用したメーターもかなり忠実に再現されており、センター・コンソールに鎮座するタッチパネルをマルチ・ファンクション・ステアリングから操作する際にも、やきもきさせられることはない。
スタート・ボタンを押していざ発進。昔のクルマのようにパーキング・ブレーキを足元で解除して、短いシフトレバーを左に倒した後に後方に引けばDに入る。耳を済ませても電気自動車特有の金切り音のようなものはない。
もちろん電気自動車だからアクセルをグイと踏み込めば、即応性はなかなかのもの。ただしバッテリーだけで550kg、トータルで2090kgの車重のおかげで、あなたが想像するほどのダッシュはしない。
多くの ’出来たて’ の電気自動車は、アクセルを離し回生機能が働き始めた時にギアボックスから不快な感覚が伝わるものだけれど、ことデンツァに関してはその辺りの完成度はかなり高い。
備わるドライブ・モードはスタンダードとスポーツの2つ。前者を選択すれば出力は92ps、後者はこのクルマの最高出力である117psまで使い切ることができるように制御される。通勤に使うならば、スタンダード・モードに固定して、航続距離を伸ばすと言った使い方もできる。
回生モードでは、ここ最近運転したどの電気自動車よりも穏やかに減速していくため、発進と停止が繰り返されるような道路状況ではきちんとブレーキを踏んで減速する必要がありそう。
標準装備の電気-油圧ステアリングは低速では軽い仕立てで操舵しやすいが、センター付近ではダイレクト感に欠け、高速コーナーではやや退屈に感じさせられる。また荒れた路面でキックバックが顕著になることもあるため、ここは改善する必要がある。
思い車重と柔らかいスプリングの組み合わせは特にコーナリング時に、ゆったりとし過ぎていると感じた。その反面ワインディングではアンダーステアの傾向に進んで持ち込もうとするような気配は微塵もないが、大径タイヤのグリップは満足できる仕上がりとなっている。
市街地を走行する際、ほんの一瞬乗り心地が不安定な時があるものの、ひとたびそれなりの速度に達すれば安定感のある走りへと打って変わる。大容量バッテリーのおかげで満充電にすればかなり安心して使えることもこのクルマの見逃せない長所だ。