ISGを採用したことで、アイドリング・ストップの制御は格段に向上した。さらにISGによるクランクシャフトの駆動はベルトによって行う仕組みであるため、再始動時のノイズが大幅に低減されていることも印象的だ。ブレーキペダルからわずかに力を抜いただけで、金属的なノイズとともにエンジンが再始動。ここから改めてブレーキを踏み込んでも、アイドリング・ストップが作動しないというストレスは、もう完全に過去のものだ。メーターパネルには、アイドリング・ストップの累計時間や、それによって節約された燃料の量を表示させることも可能だが、それを見ながらの渋滞走行は、あるいはユーザーにはひとつの楽しみなのではないか、とさえ思える。

加速時のモーターアシストは、前でも触れたようにきわめて短い時間であるし、そのアシスト量もさほど大きなものではないから、実際にそれを体感することは難しい。メーターパネルのモニターで、いわゆるエネルギーフローを確認することが、その機能が働いていることを知る唯一の方法だ。低速域ではきわめて静かで高級な雰囲気に満ち溢れていた走りだが、アクセル・ペダルを一気に踏み込むと、CVTとの組み合わせということもあり、フロントの直列3気筒エンジンが発するノイズが、やや大きなものになるのが残念だ。

短時間の試乗だったので、今回は実際の燃費性能を給油によって感じることはできなかったが、長期間使用すればするほど、ユーザーはこのクルマのランニング・コストの安さに感動させられることになるだろう。日本の軽自動車は、驚異的な勢いでなおも進化を続けている。これからこの新型ワゴンRに対して、ライバルはどのような商品を市場に投じてくるというのだろうか。

■「買い」か?

軽自動車には、機能性を最も重視したいというカスタマーならば、ハイトワゴンは最善の選択だろう。その中でもワゴンRの実用性は特筆すべきものといえる。ボディーサイズはコンパクトでも、その機能をフルに使い切る機会は、一般ユーザーにはそう多くはないはず。S-エネチャージを搭載したグレードのコストパフォーマンスは、個人的には十分に高く評価したいところだ。

(文・山崎元裕　写真・田中秀宜)

スズキ・ワゴンR FZ

価格	1,372,680円
燃費	32.4km/ℓ
乾燥重量	790kg
エンジン	直列3気筒658cc
最高出力	52ps/6000rpm
最大トルク	6.4kg-m/4000rpm
ギアボックス	CVT