アストンマーティンDBX 詳細データテスト 速さと洗練性を兼備 標準車より楽しい タイヤは不足
公開 : 2022.12.10 20:25 更新 : 2023.01.05 00:38
走り ★★★★★★★★☆☆
クラス最高のパフォーマンスを自認するDBX 707だが、そこには疑問の余地があった。原因は、アストンマーティンが選んだタイヤだ。
ライバルたちよりも秋が深まってからのテストとなったが、DBX 707のゼロ加速は、97km/hまでが3.3秒、161km/hまでが7.7秒、ゼロヨンは11.6秒だった。
2019年にテストしたランボルギーニ・ウルスに比べると、0−161km/hは0.1秒速い。固定ギアでの加速でも、わずかながら上回った。しかし、今年テストしたポルシェ・カイエン・ターボGTは、それらを多少ながら凌いでいる。0−97km/hは、アストンの公称値と同じ3.1秒だった。DBX 707では、その数字をマークできなかった。
テストコースの路面はわずかに湿っていたが、このビッグなアストンがトラクションに苦戦することはまったくなかった。ローンチコントロールを用いてのスタートは、目を見張るほど力強く、おまけにリアの沈み込みが、ほどよくドラマティックさを足してくれていた。
しかし、ウルスとカイエンがグリップレベルを高めてくれるピレリPゼロ・コルサを履いていたのに対し、707はスタンダードなPゼロがベース。これが原因で、発進加速タイムはコンマ1〜2秒ほど損している。走り出してしまえば、変速ありの80-161km/h加速で、ライバル2台に勝っているのだが。
もっとも、ベンチマークになれるかどうかはともかく、強烈なホットロッドであるのはまちがいない。有り余るパワーとトルクは、最終的に速度が高くなるほど物を言い、161−241km/h加速でポルシェに0.2秒の差をつける。もちろん、ウルスよりも上だ。
707psのV8が牙を剥けば、その勢いはすさまじい。わずかにターボラグはあるが、2500rpm以上であればほとんど気付かない程度だ。エンジン音はうるさいが、気に障るような類のものではない。キャラクターが豊かで、気持ちのいいやんちゃさがあるサウンドだ。デジタル音の演出があるとしても、気になるほどではない。いっぽうで、走行モードやエグゾーストのセッティングを和らげて、ゆったりクルージングしていれば、まずまずの洗練性もみせてくれる。
ブレーキペダルはしっかりした効き具合と、安定してフェードのない制動力を、160km/hあたりで踏んでも得られる。トランスミッションの作動ぶりはスムースで、変速はスマートだが、マニュアルモードでのシフトは、DCTのそれほどクイックではない。また、低速でギアをつなぐ際には、粗く、わずかながらギアの切り替えを感じさせることもある。