誰も知らない80年代の名車 39選 後編 マイナー過ぎてついていけない無名のクルマたち

公開 : 2022.12.10 18:25

メルクールXR4Ti(1985年)

フォードは、欧州向けのシエラXR4iを米国に導入すれば、BMWメルセデス・ベンツアウディといった高級車ブランドとの競争に打ち勝つことができると考えた。そのため、ドイツ車らしい響きを持つ「メルクール(Merkur)」という新ブランドから売ることにしたのだ。

欧州仕様とは異なり、V6ではなく2.3L 4気筒ターボエンジンを搭載し、これが車名の「T」の由来となっている。結局、ブランドが米国に馴染むことはなく、XR4Tiは約4万2000台が輸入された後、1989年に引退。大型のメルクール・スコーピオも同じ運命をたどった。

メルクールXR4Ti(1985年)
メルクールXR4Ti(1985年)

ダイハツ・クオーレ・アバンツァートTR-XX R4(1985年)

三菱ランサー・エボリューションやスバルインプレッサなど、WRC(世界ラリー選手権)で活躍するマシンの市販モデルに世界中が熱狂していた頃、ダイハツもクオーレ・アバンツァートTR-XX R4を送り出した。しかし、これはWRCのダートコースではなく、日本の肥沃な軽自動車市場から生まれたものである。

四輪駆動でターボエンジンを搭載した小さなクオーレ(日本名:ミラ)は、659ccとやや小排気量ではあるが、その実力を甘く見てはいけない。4気筒エンジンは64psを発揮し、0-97km/h加速8.5秒、気合を入れれば最高速度160km/hを超えることができる。欧州車に比べれば見劣りしてしまうが、ハードなドライビングにも応えてくれるため、意外に楽しく旅を彩ることができたのである。

ダイハツ・クオーレ・アバンツァートTR-XX R4(1985年)
ダイハツ・クオーレ・アバンツァートTR-XX R4(1985年)

UVA F33(1986年)

UVAフュージティブF33 Can-Amは、ローバーV8エンジンをミドマウントしたF30から派生したモデル。UVAのオフロード用サンドバギーをモチーフにしたシャシーに、骨太のボディを組み合わせたスポーツカーだ。1986年に発表されたF33は、スーパーカー並みの性能を誇った。しかし、フェラーリテスタロッサ風のサイドインテークや高速走行性能はほとんど見向きもされず、12台が売れるのみだった。

UVA F33(1986年)
UVA F33(1986年)

スズキ・サムライ(1986年)

このクルマは「不安定」であるという考えは、当時多くの人が持っていた。スズキ・ジムニーの輸出仕様であるが、米国のとある雑誌で「横転しやすい」という記事が掲載され、訴訟問題に発展したのだ。記事の内容は眉唾物だったが、残念なことに、サムライの発売後に生まれた人たちの間では悪いイメージが根付いている。

ジープラングラーに代わる安価なオフロード車として登場したサムライは、楽しさと悪路走破性を求める若者にウケがよく、20万台が販売された。しかし、1本の記事がきっかけで、販売も不安定になったと言われている。

スズキ・サムライ(1986年)
スズキ・サムライ(1986年)

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ。テレビゲームで自動車の運転を覚えた名古屋人。ひょんなことから脱サラし、自動車メディアで翻訳記事を書くことに。無鉄砲にも令和5年から【自動車ライター】を名乗る。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴとトマトとイクラが大好物。

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