普段使いが前提の優れた高性能クーペ

恐らく、情熱的という言葉はBMW M240i xドライブにも当てはまる。だが、その熱量はさほど高いわけでもないようだ。どちらかといえば、上質さや快適性に重きが置かれている。

もちろん身のこなしは機敏で、十二分に充足感のあるドライビング体験は得られる。それでも、心を高ぶらせる走りより実用性側に軸足がある。

BMW M240i xドライブ・クーペ(英国仕様)
BMW M240i xドライブ・クーペ(英国仕様)

公道での試乗を終え、アングルシー・サーキットでどのクルマが最もわれわれの心を掴むのか考えた時、M240i xドライブは上位に入ると予想したモデルの1台だった。審査員の間では、ノミネート車両で最初は1番人気が高かった。

ところが、「典型的な80点のクルマといえます。それはそれで悪くないのですが」。誰かが、こう口にした。リチャード・レーンも、そんな意見に考えは近かった。

「とても優れた、普段使いを前提とした高性能クーペです。3.0Lの直列6気筒エンジンは甘美に回るし、ステアリングレシオは直感的。xドライブを搭載したシャシーは驚くほど能力の幅が広いですね」

「でも、今回の11台のなかで際立つほどではないでしょう。余分な車重と、やや過剰な上級感や洗練具合が、興奮を誘うドライバーズカーとしての訴求力を鈍らせているようでした」

一般道では、適度に引き締められたシャシーで驚くほどの速さを披露した。一方で、サイズにしては重い1690kgの車重と柔らかめの足まわりで、サーキットでは少々精彩に欠いていた。

もちろん、精鋭揃いのなかで僅かに光量が足りなかっただけ。素晴らしいFRモデルだということは、誤解しないで欲しい。

この続きは(3)にて。

記事に関わった人々

  • アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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