何時間でもサーキットを走っていたい

ケータハム・セブン 420カップは7位。過去にはピュアでスイートなケータハムを敢えて除外していた時期もあったが、近年のBBDC選手権も、自動車を取り巻く世界も変化した。一般道での評価のされ方も変わってきている。今回は、久々のノミネートとなる。

ところが、最新のセブン 420カップはレース用シャシーでグリップが非常に高く、213psのエンジンではパワー不足が否めなかった。ターボ付きのエンジンでシャシーの能力を完璧に引き出すか、少し穏やかなシャシーチューニングが必要そうだ。

レッドのケータハム・セブン 420カップとネイビーのRMLショートホイールベース
レッドのケータハム・セブン 420カップとネイビーのRMLショートホイールベース

それならバランスが整うだろう。通常のセブン 420は同じエンジンを搭載し、シャシーは優しい。フロントガラスも装備され、ソフトトップを閉めれば雨風を防げる。それで2000ポンド(約33万円)お手頃なのだから、より魅力的に映ってしまう。

お高いセブン 420カップの追加費用の大部分は、シーケンシャル・トランスミッションに充てられている。公道ではスムーズな変速が難しいものの、少なくともサーキットではその性能がいかんなく発揮されていた。

特に気に入っていたのはマット・ソーンダースだ。「トランスミッションが最高。勢いよく吹け上がり、盛大なエグゾーストノートを奏でる4気筒も素晴らしい。シャシーのバランスを発揮させるべく、運転で歩み寄るスタイルも好きですね」

「もう少しグリップ力が弱ければ、もっと楽しめたでしょう。それでも、何時間でもサーキットを走っていたいと思わせるクルマです。疲れ果てるまで」

セブンにはより良い仕様が存在する

マット・プライヤーも基本的には好感触だった。「走る環境を問わず、セブン 420カップが好きになりました。ケータハムとして、完璧な仕様なのかは悩ましいですが」

「エンジンは素晴らしい。トランスミッションも素晴らしい。しかし、公道を攻めると、ハードエッジで少し気まぐれなところがあります。サーキットでも、数周は走り込まなければ個性を掴みきれません」

英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権 比較試乗の様子
英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権 比較試乗の様子

420カップは、多くのドライバーから愛されてきたブランドによる、最新のチューニング・セブンではある。だが、より良い仕様が他に存在することをわれわれは以前から知っている。今回はどっちつかずの結果に終わった。

さて、今回は非常に高価なレストモッド・モデルもノミネートしている。1950年代末のフェラーリ250 SWBに強い影響を受けた、RLMショートホイールベースだ。その仕上がりに、審査員全員が称賛の声を止めることができなかった。

偽りなく、いつまでも運転を楽しんでいたいと思わせるクルマだ。英国価格は162万ポンド(約2億6892万円)もするし、ベース車両がフェラーリだとはいえ、25年ほど前の550マラネロではあるけれど。

公道へ設定が振られた柔らかめのサスペンションと、ハードコンパウンドなピレリ・タイヤという組み合わせで、絶対的なスピードはそこまででもない。それでも絶え間ない喜びで、不満が湧き上がるスキはまったくなかった。

この続きは(4)にて。

記事に関わった人々

  • アンドリュー・フランケル

    Andrew Frankel

    英国編集部シニア・エディター
  • オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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