トップ3からベストを選ぶ 凄まじい動力性能のフェラーリ296 GTB 2種のポルシェも BBDC 2022(5)

公開 : 2023.01.02 13:45

今年1番運転の楽しいクルマは? BBDC 2022(1) 公道とサーキットで11台を乗り比べ

メーカーや価格を問わず今年のベストを選出

英国ベスト・ドライバーズカー(BBDC)選手権の審査は厳しい。サーキットの縁石へ容赦なく乗り上げるし、水たまりが残っていても構わず攻め込む。糖質の高い炭水化物も、休憩時間に避けることは難しい。

1メーカー1車種というルールを設けることもできるだろう。その考え方には一理あるが、本当に公平な選考基準だとは限らない。公平に見えるようにするための、恣意的な決め事といえる。

イエローのポルシェ718ケイマン GT4 RS、レッドのフェラーリ296 GTB、ブルーのポルシェ911 GT3
イエローのポルシェ718ケイマン GT4 RS、レッドのフェラーリ296 GTB、ブルーのポルシェ911 GT3

AUTOCARでは、そんなことはしない。国やメーカー、価格を問わず、今年を代表するドライバーズカーといえる上位10台と、昨年のディフェンディング・チャンピオンを同時に比較する。数名の審査員で。

比較する場所は、いつものグレートブリテン島の中西部に位置するノース・ウェールズ地方。チャレンジングな一般道とアングルシー・サーキットが舞台。これが毎年のやり方だ。

というわけで、2022年のノミネート車両には2台のポルシェが選ばれた。いずれも秀逸のGTモデルで、1台はディフェンディング・チャンピオンだから、間違いなく最高の仕上がりにある。11台による直接比較を経て、トップ3に勝ち残っている。

ポルシェ911 GT3と718ケイマン GT4 RSは、すべての審査員から疑問の余地がない点数を得ている。好みや考えの異なる5名が、同じ条件で乗り比べ、ドライビング体験の楽しさを採点していく。

最高出力や最高速度も、直接的には点数に関与しない。プロセスは至って公平だ。不要な主観は入ってこない。

レース用ガソリンを持ち込んだフェラーリ

ただし同じ条件という基準では、フェラーリは若干逸脱していたかもしれない。恐らく34回のBBDC選手権を通じて、電気の力まで借りた296 GTBは最高出力が1番高いが、もちろんそれが理由ではない。

フェラーリは今年、極めてグリップ力の高いミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2 Rタイヤを自ら持ち込み、アングルシー・サーキットでの走行に備えた。しかも、独自に手配したレース用のハイオクタン・ガソリンを給油してもいる。

フェラーリ296 GTB(英国仕様)
フェラーリ296 GTB(英国仕様)

ノミネート車両を貸し出してくれた各メーカーは、もちろんポルシェも、そこまではしていない。BBDC選手権に対する彼らの意気込みは伝わってくるが、これをどう捉えるだろうか。

もちろん、パイロットスポーツ・カップ2は、ショールームで選択できるタイヤではある。しかし、レース用ガソリンについて事前に知らされていれば、筆者は反対しただろう。通常のガソリンで評価したいと主張したはず。

フェラーリ側は、事前許可ではなく事後として許してもらおう、という姿勢だった。296 GTBは2022年のドライバーズカーとして秀抜で、今回の審査から除外することはできなかった。

充分速く走れるのに、それ以上を求める必要はないように思う。不正行為というわけではない。レース用ガソリンに対してはルールを設けていない。これは、AUTOCAR側の不備といえるかもしれない。

必要に応じて能力を最大限に発揮できるよう、事前の整備は認めているが、ラップタイムは審査の得点へ直接結びつくものではない。後味が悪くても、クルマに罪はないが。

記事に関わった人々

  • オルガン・コーダル

    Olgun Kordal

    英国編集部フォトグラファー
  • マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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