フォードロータス・コルティナ

「ほとんどの人が普通のコルティナだと思っていた」と、ブルース・レイノルズは2001年に英BBCに語った。英国を揺るがした1963年の大列車強盗事件の首謀者であるレイノルズは、番組で当時使用されたフォード・ロータス・コルティナ(登録番号BMK 723A)と再会したのである。

1960年代の一般的な乗用車であったフォード・コルティナに、ロータス製の1.6Lエンジンを積んだ高性能モデルがフォード・ロータス・コルティナだ。見た目は大人しいが、最高出力106psとパワフル。レイノルズは、列車強盗のためにこのクルマを購入したのだという。

フォード・ロータス・コルティナ
フォード・ロータス・コルティナ

「昔の列車強盗、ブッチ・キャシディとサンダンス・キッドのことをよく考えていた。彼らは常に『最高の馬を持っていること』を信条としていたんだ。フォード・ロータス・コルティナには、当時としては最高の馬力があったんだ」

ヴォグゾール・ロータス・カールトン

裏社会とのつながりを考えると、ロータスが「共犯者」として起訴されないのは驚きである。というのは冗談で、平凡なクルマを驚異的なスポーツカーに変えるロータスを非難できるはずがない。ヴォグゾール・カールトンをベースにしたロータス・カールトンは、最高速度283km/hを記録する高性能セダンであった。

このクルマが有名になったのは、1994年にウェスト・ミッドランズで発生した連続強盗事件だ。強盗団が盗んだロータス・カールトン(登録番号40PA)を使って連続的に事件を起こし、大きな話題となった。警官のデビッド・オリバーは次のように話している。

ヴォグゾール・ロータス・カールトン
ヴォグゾール・ロータス・カールトン

「我々は、単純に近づくことすらできなかったし、これからもできそうにない。我々の都市型パンダ車(パトカー)は145km/hしか出せないのだ」

フォード・トランジット

1972年、ロンドン警視庁はフォード・トランジットを「英国で最も指名手配されているバン」と呼んだ。警視庁の広報担当者は、「フォード・トランジットは銀行強盗の95%に使われている。乗用車並みの性能と1.75トンの戦利品を積むスペースを持つトランジットは、完璧な逃走車であることが証明されている」と述べている。警察のお墨付きというわけだ。

1983年に発生したブリンクス・マット強盗事件では、青色のフォード・トランジットが使用された。ヒースロー空港の警備会社の倉庫から2600万ポンド相当の金塊を盗むという大胆極まりない事件で、犯人はトランジットに金や宝石をたっぷり詰め込んで逃走を図ったのだ。しかし、トランジットは現場からわずか20km離れたアールズコート通りで故障してしまう。もし警察が、3トンの金塊の重みでサスペンションがきしんでいることに気づいていれば、事件はもっと早く解決したかもしれない……。

フォード・トランジット
フォード・トランジット

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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