クルマ産業へ偉大な貢献 オースチン・セブン 英国版クラシック・ガイド 誕生から100年 後編

公開 : 2022.12.24 07:06

自動車の普及に貢献したオースチン・セブン。誕生100年を迎える、彼の地での定番クラシックを英編集部がご紹介します。

定期的なグリスアップがメンテの第一歩

オースチン・セブンは、軽量化を強く意識して設計されている。必要なメンテナンスの頻度は、現在のクルマの比ではないほどに高い。すべてのポイントへ定期的にグリスアップすることが、まずその第一歩となる。

トランスミッションは、かなりギア比が低かった。日常的な運転でも、4速MTでは3速と4速の出番が非常に多い。3速MTなら、ほぼトップに入れっぱなしになる。

オースチン・セブン(1922〜1939年/英国仕様)
オースチン・セブン(1922〜1939年/英国仕様)

696ccか747ccの直列4気筒エンジンはトルクが充分にあり、粘り強く柔軟に走る。調子が良ければ、回転数の変化などに気難しいことはない。

パワー不足を感じる場合は、点火タイミングの微妙なズレや、キャブレターの不調が原因のことも少なくない。排気ガスが青白く煙ったり、エンジンオイル漏れが酷かったり、始動性が極端に悪い場合はエンジンのリビルトを考えたい。

オースチン・セブンの部品は、英国では今でも簡単に入手できる。専門ガレージやオーナーズクラブなどの環境も整っており、ベアリングのリビルドなども対応可能だ。

エンジンは耐久性に長けるとはいえず、別のユニットへ載せ替えられている例も多い。セブン・オーナーの間では、エンジン・スワップは特に珍しい作業とはいえない。

生産が後年の方が運転しやすい

モデルライフを通じて、オースチンによる細かな改良が頻繁に施されてきた。エンジンスターターは、1931年9月にトランスミッション・ボックスの上からエンジンの横側へ移動している。そのため、新しいクランクケースも採用されている。

トランスミッションは、変速時にギアの回転数を調整するシンクロメッシュが装備された後期型より、初期型の方が頑丈だった。クラッチは、1936年8月以降からフリクション・プレートが変更され、つながりやすくなっている。

オースチン・セブン(1922〜1939年/英国仕様)
オースチン・セブン(1922〜1939年/英国仕様)

ワイヤーで操作する初期のブレーキは、ワイヤーの伸びや部品の摩耗が原因で、本調子の時ほど効かない場合も珍しくない。オイルやグリスでブレーキシューが汚れても、効きが弱くなる。ボディが重くなるほど、顕著に制動力へ影響が出ていた。

1938年からは、ロッドブレーキへ変更されている。これらの改良で、生産が後年なほど運転しやすいといえる。

今回ご登場いただいたセブンは、1932年後半に作られたボックスサルーン。基本的な構造は多くのセブンと共通しているが、10年前の発売当初と比べると、ほぼすべての部品が変更されている。

ホイールベースは初期型より約150mm長い。車内空間を広く取れ、大きなドアのボディを載せられるようになっている。

これから探す場合は、大事に乗られてきたセブンを時間を掛けて探したいところ。オーナーになったら、ぜひこれまで同様に大切にして欲しい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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