ベルリンのトラバント博物館 マニア垂涎の展示内容 希少車、変態車との出会い

公開 : 2022.12.24 18:05

トラバント・キューベルワーゲン

東ドイツ国家人民軍では、トラバントベースの派生型がいくつか使われていた。1966年に登場した「キューベルワーゲン」は、4枚の脱着式ドアとソフトトップを備え、リアエンドのデザインを変更したオープントップモデルである。

エンジンなど中身は標準的なトラバントと同じ。1978年には「トランプ(Tramp)」と呼ばれる民間向けモデルが生み出されたが、500台未満しか製造されなかったと言われている。

トラバント・キューベルワーゲン
トラバント・キューベルワーゲン    AUTOCAR

601の心臓部

1964年から1990年まで生産された601は、そのシンプルさが長寿の理由の1つであった。搭載される排気量595ccの空冷2気筒2ストロークエンジンは、コンパクトで頑丈、かつ洗練されていない。初期型の最高出力は約23psだったが、1969年には26psにチューンアップされた。横置きに搭載され、前輪を駆動する。4速MTのシフトノブはダッシュボードから突き出ている。

トラバント601の排気量595cc空冷2気筒2ストロークエンジン
トラバント601の排気量595cc空冷2気筒2ストロークエンジン    AUTOCAR

フェラビ(The Ferrabi)

この601に惑わされてはいけない。「フェラビ(Ferrabi)」というユーモラスな名を持つこのオープンカーは、フェラーリ512 TRを模したボディキットを装着したワンオフモデルである。

トラバントと現代のフェラーリ・モデルの共通点は、少なくとも「入手に時間がかかる」ことだろう。601の新車購入では、納車まで何年も待たされることもあった。

フェラビ(The Ferrabi)
フェラビ(The Ferrabi)    AUTOCAR

世界最速のトラバント

スーパーカーを思わせる見た目のフェラビだが、決して速いわけではない。栄誉ある「世界最速のトラバント」の称号は、レース用に大改造された601に与えられている。2気筒エンジンは約80psにチューニングされ、最高速度は約196km/hに達する。これは無改造トラバントの約2倍の最高速度である。

巨大なウィングや空力特性に優れたドアミラーを装着し、軽量化のために内装を剥がすなど、数々の改造が施された。また、ロールケージも装備されている。シュテフェン・グロスマン(Steffen Grossmann)という人物がこのマシンでラリーに参戦し、トラバントの最高速度記録を打ち立てた。

世界最速のトラバント(シュテフェン・グロスマンの601)
世界最速のトラバント(シュテフェン・グロスマンの601)    AUTOCAR

グロスマンの601はサーキットの内外で評判となり、玩具メーカーのレヴェル(Revell)社によってスロットカーとして商品化もされている。しかし、彼の記録は破られた。2010年には、愛好家のマイクとロニー・アーランドが601を改造し、235km/hを記録したのだ。

トラバントに関する数々のジョークの1つに、そのブレーキを揶揄するものがある。「トラバントを止めるものは何もない、ブレーキでさえも」……両名のために、それが真実でないことを祈りたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ロナン・グロン

    Ronan Glon

  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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