目的地は北の果て ポールスター2でシェトランド諸島へ 上品なEVホットハッチ 後編

公開 : 2022.12.24 09:46

グレートブリテン島から約170km北のシェトランド諸島。再生可能エネルギー開発が進む小さな島を、英編集部がEVで巡りました。

諸島で最も壮観な景色が広がるアンスト島

シェトランド諸島のイェル島を数km南へ戻り、グッチャー・フェリー乗り場へ。好奇心旺盛なカワウソが岸辺でくつろいでいる。シャチが泳ぐ姿もラッキーなら観察できるらしい。今日は違ったけれど。

イェル海峡を渡るフェリーの半分くらいの大きさの、小さな船へポールスターを載せる。船員は手際が良く、船が港について、荷降ろしを終え、積み込みして出発するまでに10分も掛からない。

ポールスター2(英国仕様)
ポールスター2(英国仕様)

湾は荒れていて、うねりに飲み込まれる。船体へ当たる波音が聞こえるが、キャビンは快適。水平線が左右へ傾く様子がシュールだ。

あっという間に、シェトランド諸島で最も壮観な景色が広がるアンスト島へ到着。ここが、今回のポールスター2での旅の最終目的地になる。

島の南端のフェリー港には、巨大な三脚状の鉄骨が置かれていた。潮力タービンの土台部分だという。

アンスト島は小さく、北の端までは約23km。ポールスター2の充電量は69%。エネルギーには余裕があるから、これまで我慢してきたステアリングホイール・ヒーターをオンにし、エアコンの温度を上げる。

タッチモニターに表示される航続距離を確認すると、下り坂を約2km進むごとに、0.2kWhが充電されているのがわかる。回生ブレーキは効果的だ。

アンスト島は、ほとんどが農地で覆われている。フェンスで囲われたグリーンの地面が一帯に続く。北欧と並んで、バイキングとゆかりの深い場所でもある。

風力や潮力で作られた電気でクルマ旅

島の中部には、ボビーズ・バスシェルターという、賑やかに飾られたバス待合所がある。地元の人によって毎年改装されており、前エリザベス2世女王の在位70周年を祝ったプラチナ・ジュビリーの装飾が華やかだった。

北端へ進むと、隆起した小高い丘がある。頂上では、英国空軍のレーダードームが周囲を監視している。冷戦後は休止していたが、英国領空周辺で活発に飛行するロシア空軍機に備えて、2018年から再稼働している。

ポールスター2(英国仕様)
ポールスター2(英国仕様)

ホルセンズ・ロードという狭い道で、岬の先端へ。斜面の荒野を縫うように走り、総長約39万8794kmある英国道路網の北の果てへ辿り着いた。

記念撮影を終えて坂を下ると、ウィック・オブ・スカウという小さな湾が見えてくる。アスファルトはグラベルになり、そのまま砂浜へ続く。

道の終わりに、地元の人が乗るフォードのミニバンが停まっていた。ドアはロックされず、助手席側のドアハンドルはない。この土地は英国では2番目に犯罪率が低い。道を走るクルマは、車検を受けていないのかもしれない。

われわれもポールスター2を降りて、ビーチを散策する。波音以外の静けさを満喫する。自動車が走行時に出すCO2は、排気ガスだけが原因とは限らない。少なくともイェル島に上陸して以降は、潮力で作られた電気でクルマ旅をしてきた。

ポールスター2は頼れるパートナーになった。先進的な技術とすぐに親しくなれる。

記事に関わった人々

  • マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • リチャード・ウェバー

    Richard Webber

    英国編集部ライター
  • 中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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