玉座のような独立リアシート ベントレー・ベンテイガ EWBへ試乗 SUV新基準の快適性

公開 : 2022.12.23 08:25

リムジンのミュルザンヌの後を担う、ベンテイガのロングホイールベース版。英国編集部が仕上がりを一般道で確かめました。

量産車として最高水準の車内空間

世界トップクラスにラグジュアリーでパワフルなベントレーベンテイガに、ロングホイールベース版のEWBが登場した。突出した仕上がりを確かめるのに、フロント側から始めるべきか、リア側から始めるべきか、少し悩んでしまった。

そんな時は、その中間から確認していこう。ベンテイガ EWBは前後タイヤの間隔、ホイールベースが180mm伸ばされている。新基準の快適性とオンロードマナーを獲得するために。

ベントレー・ベンテイガ EWB アズール(英国仕様)
ベントレー・ベンテイガ EWB アズール(英国仕様)

ドライバーは、身軽な操縦性と高速域での安定性を向上させる、新しい四輪操舵システムの恩恵にあずかれる。一層、安楽さを高めたといっていい。

インテリアの素材や仕立ては、量産車として最高水準。小変更を経ているが、現行型は2015年の発表なだけあって、ダッシュボードの雰囲気には若干の古さも漂う。非常に精巧に作り込まれているけれど。

続いてリア側。電動でアシストされる長いリアドアを開くと、数ある高級車でも特に豪華でゆとりのある車内空間が広がる。ロングホイールベースのレンジローバーロールス・ロイスカリナンと比べても、さらにワンランク上だろう。

リアシートは、従来的な3名掛けのベンチーシートの他に、両サイドの快適性を高めた2+1レイアウトも選べる。試乗車のように左右で独立した、飛行機のビジネスクラスのような2名掛けも選択できる。

玉座のようなシートが2脚据えられ、乗る人に合わせて多様に角度などを調整できる。筆者が知っているどんな旅客機より快適に感じられた。

549psの4.0L V8にエアサス 乗り心地は向上

雑音や振動などを低減させるため、新たな努力も施されている。従来のベンテイガは、その分野で不満を感じられたわけではない。それでもロングホイールベース版は、ベントレーの新たなフラッグシップに相応しい。

運転手を雇えるオーナーにとっては、最適なチョイスになりそうだ。ミュルザンヌなき後では。

ベントレー・ベンテイガ EWB アズール(英国仕様)
ベントレー・ベンテイガ EWB アズール(英国仕様)

続いてフロントへ移ろう。今のところ、ベンテイガ EWBで選択できるパワートレインは、アウディも採用する4.0LツインターボV8エンジンのみ。最高出力は549psを発揮し、8速ATを介して4本のタイヤへ伝達される。必要に応じて、伝達割合も可変される。

車重は2514kgあるが、0-100km/h加速は4.5秒。最高速度は289km/hに届く。

通常のベンテイガでは、3.0L V6ガソリンエンジンと駆動用モーターを組み合わせた、プラグイン・ハイブリッド(PHEV)もある。現状ではEWBにラインナップされていないが、半導体の供給が改善し需要が高まれば、追加される可能性は高い。

全体的なドライビングフィールは、通常のベンテイガのそれに近い。だが、ホイールベースが伸ばされたことで変化も生まれている。特に乗り心地は明らかに向上している。

サスペンションは3モード付きのエアスプリング。電圧48Vで制御されるアクティブ・ボディロール制御システムを搭載し、可能な限り水平が保たれる。

確かに、レンジローバーの方が低速域での質感や鋭い入力に対する処理は一枚ウワテ。それでもSUVとして、この乗り心地に不満を漏らす人はいるのだろうか。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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