軽規格のセブン復活! ケータハム・セブン170Rに試乗 車重440kg 待望R仕様

公開 : 2022.12.20 07:45  更新 : 2022.12.20 09:21

軽さ、あらゆるネガティブを払しょく!

Rの文字が刻まれたシフトレバーは左右の動きが規制され、素早いシフトを可能にしている。

加速は今どき珍しいくらいの「ドッカンターボ」で、シフトアップの度に突き刺すようなパンチが繰り出される。

155幅ゆえ最大過給の瞬間にホイールスピンすることもあるが、コントロールは容易い。乗り心地は記憶の中にある粗野なレーシングセブンのそれではなく振動をスッと吸収するフレームと良く動くアシの存在がパラレルに伝わってくる。
155幅ゆえ最大過給の瞬間にホイールスピンすることもあるが、コントロールは容易い。乗り心地は記憶の中にある粗野なレーシングセブンのそれではなく振動をスッと吸収するフレームと良く動くアシの存在がパラレルに伝わってくる。

だが誉めるべきはやはり軽さだ。必然的にターボが効かない低&高回転域も、車体の軽さのおかげで加速感がほとんど鈍らないのである。

ブレーキも強烈に効くが姿勢変化は最小。タイヤが155幅と細いので最大過給の瞬間にホイールスピンすることもあるが、そのコントロールは容易い。これもタイヤが細い→車重が軽いことによる恩恵なのである。

とはいえ車重が軽いからこそ路面が少し粗いだけでバタバタ跳ねてしまうという性格もセブンは含んでいたはず。ところが170Rの乗り心地は記憶の中にある粗野なレーシングセブンのそれではなかった。

170Sとは異なるスポーツサスが組み込まれているにもかかわらず、振動をスッと吸収するフレームと良く動くアシの存在がパラレルに伝わってくる。

また「軽トラ」のリジッドアクスルを流用したリア足回り形式であるにも関わらず、左右に切り返したときの姿勢変化がとても滑らかで驚かされた。以前のセブン160はその部分がもっと曖昧かつ突っ張っていたような?

見えにくい部分に退行的進化の跡あり

車体下からリアサスを覗き込んでビックリ。160では斜め1本棒のパナールロッドだったリアアクスルの左右位置決めが、ロータス伝統のAブラケットによる中央支持に変わっていたのだ。最新のセブンは構造的な先祖返りも果たしている(?)

しかも重要なのは、それが技術的な退化ではなく、コーリン・チャプマン由来の理想形であるという点だろう。

160では斜め1本棒のパナールロッドだったリアアクスルの左右位置決めが、170はロータス伝統のAブラケットによる中央支持に変更。技術的な退化ではなく、コーリン・チャプマン由来の理想形といえる。
160では斜め1本棒のパナールロッドだったリアアクスルの左右位置決めが、170はロータス伝統のAブラケットによる中央支持に変更。技術的な退化ではなく、コーリン・チャプマン由来の理想形といえる。

また以前は日本のクスコ製LSD(軽トラが泥濘地から脱出するための強固な設定)が組み込まれていたが、それが170Rではイギリス、クワイフ社製の専用LSDに置き換わっている点もマニアックなポイントだ。

イギリスの小規模メーカーの作品の中には懐かしさを愛でるものもあるが、セブンは「ガラパゴス」とはいえ65年もの間ずっと進化を模索し続けてきた歴史がある。

一時はハイパワーに活路を求めたスタイルが称賛されたが、急速に「雷雲」が発達している今になって、軽さと伝統的な構造にフォーカスを当て、根源的な進化を成し遂げたというわけである。

撮影の最後、セブン未体験だという写真家の村田くんを助手席に乗せ、彼の絶叫を大いに楽しんでみた。

そう、真のスポーツカーは乗り手の心拍数を限界まで引き上げ、笑顔を引き出すようなものであるべきだ。

ケータハム・セブン170Rのスペック

価格:599万5000円
全長:3100mm
全幅:1470mm
全高:1090mm
ホイールベース:2225mm
最高速度:168km/h
0-100km/h加速:6.9秒
燃費:-
CO2排出量:-
車両重量:440kg
パワートレイン:直列3気筒658ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:85ps/6500rpm
最大トルク:11.8kg-m/4000-4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル

ケータハム・セブン170R
ケータハム・セブン170R

記事に関わった人々

  • 執筆

    吉田拓生

    Takuo Yoshida

    1972年生まれ。編集部員を経てモータリングライターとして独立。新旧あらゆるクルマの評価が得意。MGBとMGミジェット(レーシング)が趣味車。フィアット・パンダ4x4/メルセデスBクラスがアシグルマ。森に棲み、畑を耕し蜜蜂の世話をし、薪を割るカントリーライフの実践者でもあるため、農道のポルシェ(スバル・サンバー・トラック)を溺愛。
  • 撮影

    村田研太郎

    Kentaro Murata

    1997年生まれ。シンガポール出身、神奈川県川崎市在住。17歳の時に報道写真に影響を受け写真家を志し、日本大学芸術学部写真学科を卒業。2018年に渡英し、ロンドンにてTakahito Sasakiに師事しながら、ファッション写真のジャンルを中心に写真家としてキャリアをスタート。以後、広告からドキュメンタリーまで、ジャンルを問わずに活動中。駅をアートで埋める企画YAMANOTE LINE MUSEUMに参加している。

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