PHEV化で得たものとは メルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンスへ試乗 総合680ps 後編
公開 : 2022.12.26 08:26
4気筒ターボでハイブリッドになったAMGの C63。速さはV8に並ぶものの、興奮を呼ぶ獰猛さは潜めたと、英国編集部は評価します。
レース・モードで効果的なブースト機能
プラグイン・ハイブリッド(PHEV)になった最新のメルセデスAMG C 63 S Eパフォーマンスは、ドライブモードでレースを選択すると、独自のトラック・プレシジョン・ソフトウエアが始動。GPSで自車の位置が確認される。
発進すると、駆動用モーターの全力を開放するべきポイントを、モニター式メーターパネルに表示される「BOOST」で教えてくれる。ブーストを効かせるには、アクセルペダルを踏み込んだ一番奥にある、キックダウン・スイッチまで倒せばOKだ。
F1のハイブリッドシステム、KERSのように、クオリファイ気分で最大限のパワーを繰り出して周回するのは確かに楽しい。しかも指示通りにブーストを使っている限り、駆動用バッテリーが空になることは基本的にない。減速時に充電されるためだ。
かつてのホッドロッドのように獰猛なAMGと比較すれば、得られる興奮度は限定的ではある。それでも、駆動用モーターがフルパワーでアシストし始めると、息を呑むほど速い。
レース以外のドライブモードを選択すると、キックダウン・スイッチまで倒さなくても、駆動用モーターは積極的に働く。シフトパドルを弾いて9速ATの高いギアへ入れると、低い回転数から豊かなトルクが湧き出し、安楽でたくましい。
ドライブモードは、ドリフト・モードを除いて8種類もある。PHEVだから、EVモードやバッテリーホールド・モードなども含まれている。
5000rpm以上でも猛烈な勢いで加速せず
エンジンの回転数が高まると、シリンダーが4本だということが伝わってくる。大排気量な気筒エンジンのように、豪快に吹け上がることはない。5000rpmを超えても、猛烈な勢いでは加速しない。
従来のC 63のように、高回転域で炸裂するようなエネルギッシュさは薄い。たまらずシフトダウンすると、すぐにレブリミッターへ当たってしまう。
聴覚的な充足感も濃くはない。決して耳障りなサウンドを響かせるわけではないものの、オプションをプラスして10万ポンド(約1660万円)前後と予想される英国価格を考えれば、筆者には物足りなく聞こえた。
操縦性は素晴らしい。可変式の四輪駆動システムは、後輪駆動のようにコーナリングラインを調整していける。ドリフト・モードを選択すれば、白煙を充満させながら暴れまわることも造作ない。
ただし、前後の重量配分に優れたシャシーと、トルクベクタリング機能が相乗することで得られるであろう、動的な訴求力はそこまで高くはないことも事実。2165kgという、車重を隠しきることは難しいのだろう。
高速コーナーでは、基本的にアンダーステア傾向。タイトコーナー手前のブレーキングでは、もう少し制動力が欲しいとも感じた。
公道へ場所を移すと、乗り心地は概ね良好。高速域での姿勢制御にも優れている。それでも軽くない車重のためか、細かな上下動を抑え込むのに苦労している様子ではあった。