ルノー8 ゴルディーニ xBMCミニ・クーパーS ワールドカップ優勝国のクルマ 8台を比較(1)

公開 : 2022.12.28 15:05

ルックスの面でもベストプレイヤー

R8 ゴルディーニは始動時からラリーカーのように荒々しい。ポン、ポン、ポンッと弾けるようにアイドリングする。アクセルペダルを傾ければ、聞き惚れる勇ましいノイズが放たれる。

直線加速はさほど速くない。高回転域を好み、3000rpm以下では線が細いものの、滑らかに回転するエンジンはスピード以上に濃厚。排気量こそ違えど、基本的にはアルピーヌA110と同じユニットで、7000rpmまでストレスなく吹け上がる。

ルノー8 ゴルディーニ(1964〜1966年/英国仕様)
ルノー8 ゴルディーニ(1964〜1966年/英国仕様)

ベースが四角い4ドアサルーンだから、低速域ではボディが重く感じられる。だが、通常のR8でも前後にディスクブレーキが組まれ、フランス製スポーツサルーンの源流に位置する。リクライニング・シートという、当時では新しい快適装備も採用されていた。

リアエンジンだから、フロントのボンネットを開くと荷室が広がる。ナンバープレート裏側のパネルから引き出す、スペアタイヤも特徴だろう。

改めてR8 ゴルディーニを間近で見ると、控えめながら鮮鋭なスタイリングへ惹き込まれる。ディティールにも見入ってしまう。適度に散りばめれられたクロームメッキ・トリムが、上品に華やかさをアシストしている。

中央が凹んだボンネットや個性的なドアのプレスラインなど、トリッキーな造形も好印象。フランス車として、ルックスの面でもベストプレイヤーに加えられるだろう。

イングランド:BMCミニ・クーパーS

W杯優勝:1966年

イングランド(英国)がワールドカップで優勝したのは1966年の1度。丁度その頃、自動車産業は黄金期にあった。偶然かもしれないが、国内に勢いがあったことは間違いない。その頃を象徴するモデルといえば、BMCミニ・クーパーS以外にないだろう。

オリジナルのミニ・クーパーSが、ショールームから姿を消したのは1970年。それまでにモンテカルロ・ラリーで活躍し、映画「ミニミニ大作戦」では銀幕デビューを果たしていた。コンパクトカーで、世界の頂点にいたといっても過言ではない。

ホワイトのBMCミニ・クーパーSとブルーのルノー8 ゴルディーニ
ホワイトのBMCミニ・クーパーSとブルーのルノー8 ゴルディーニ

英国レース界のレジェンド、ジョン・クーパー氏によって、ダイヤの原石から磨き出されたクルマ界のトップ選手。ベースを生み出したのは才能豊かな技術者、アレック・イシゴニス氏だった。

ミニ・クーパーが誕生したのは1961年。その後1963年に1071ccのクーパーSが誕生。さらにクーパーSは1964年に1275ccへバトンタッチし、スポーツ・ミニのイメージを強く焼き付けた。

弱者が強者へ挑むという姿勢に、英国人は弱い。そんな嗜好にも、ミニはうまく合致した。果敢に挑むサッカーチームにも重なるように思う。バランスに優れたシャシーに、チューニング・エンジンを組み合わせた、元祖ジャイアントキラーだ。

ハットトリックを決めたジェフ・ハースト氏なきあと、サッカー代表チーム「スリーライオンズ」の勢いには少し陰りがあるようだが、ミニは今でも威勢がイイ。小さなアクセルペダルを傾ける度に、前方へ鋭くダッシュする。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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