フォード・ファルコン xメルセデス・ベンツ250CE ワールドカップ優勝国のクルマ 8台を比較(2)

公開 : 2022.12.29 15:05

アルゼンチンが優勝した2022年のワールドカップ。英国編集部では、過去にW杯で勝利を掴んだ8か国のクラシックを比較しました。

アルゼンチン:フォード・ファルコン

W杯優勝:1978年、1986年、2022年

ラ・アルビセレステスという愛称を持つサッカー・アルゼンチン代表チームは、スポーツマンシップの高さで知られる。2022年のワールドカップでは批判の出るプレーもあったが、最終的にはフランスを下し見事優勝を掴んだ。

その国の代表として選ばれたクルマは、フォード・ファルコン。彼の地では強い人気を誇った大型サルーンで、政府用車両としても活躍した。しかし1970年代中頃から内戦が勃発。軍事政権が乗ったダークグリーンのファルコンは、負のイメージを残した。

ブルーのフォード・ファルコンとレッドのメルセデス・ベンツ250CE
ブルーのフォード・ファルコンとレッドのメルセデス・ベンツ250CE

アルゼンチン人にとっては憧れのファミリーカーであり、市民制圧と虐殺の象徴でもある。強い2面性を持ったモデルだ。

今回ご登場願った初代ファルコンはアメリカ・デトロイト製だが、1962年からアルゼンチンでノックダウン生産されていた。4ドアサルーンのボディに2.8Lの直列6気筒エンジンという仕様は、ほぼ一致している。今回の8台では最も古い。

アルゼンチン・フォードは細かな改良を加え、初代ファルコンを1991年まで生産し続けた。頻繁にフェイスリフトとモデルチェンジが必要だったアメリカ市場より、20年も長く売られていた。ほぼ30年間、モデルライフが続いたことになる。

3速MTは1960年代でも既に古い技術だった。だが、彼の地では最後までバリバリの現役だった。

リラックスしたアメリカン・クルーザー

アルゼンチン代表といえば、ブルーとホワイトのストライプを着た、ディエゴ・マラドーナ氏やリオネル・メッシ氏が思い浮かぶ。優雅とさえいいたくなる、素晴らしい身体能力とセンスの持ち主だ。

一方のファルコンは、ストリート・サッカーのように少々泥臭い。クラッチペダルのストロークは長く、スプリングが軋む。長く折れ曲がったシフトレバーは、農業用機械のようでもある。

フォード・ファルコン(1962〜1991年/北米仕様)
フォード・ファルコン(1962〜1991年/北米仕様)

ひとたびトップギアへ入れば、リラックスしたクルーザーとしての能力を発揮する。ステアリングは想像以上に洗練されており、不安定さはない。スプリングはソフトで、乗り心地も柔らか。余計な振動は吸収してくれている。

エンジンは2.8Lあっても、速くはない。少ないメンテナンスで乗れるよう、堅牢性が重視されている。多少ガソリンの品質が悪くてもお構いなし。トルクは太く、100km/hでの巡航走行も快適だ。

路面が舗装されていなくても、長距離ドライブを快適にこなせる。広大なアルゼンチンという土地に最適化されている。コーナリングは不得意。カーブではボディが大きくうねる。少なくとも、ステアリングホイールの操作に対する反応は予想しやすい。

インテリアは、1960年代のアメリカン・ファストフード店のよう。鮮やかなカラーに、クロームメッキが散りばめられている。

ボディは、当時としてはクロームメッキの量が控えめ。それでも、宇宙開発へ積極的だった時代を物語るように、スタイリングは宇宙船のよう。見た目のクールさでは、今回の8台で上位に食い込むことは間違いない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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