フォード・ファルコン xメルセデス・ベンツ250CE ワールドカップ優勝国のクルマ 8台を比較(2)
公開 : 2022.12.29 15:05
ドイツ:メルセデス・ベンツ250CE
W杯優勝:1954年、1974年、1990年、2014年
「22人の選手が90分間1つのボールを追いかけ、ゴールを狙う。最後はドイツが勝つ」。と、イングランドの元代表選手だったゲーリー・リネカー氏はディー・マンシャフト、ドイツ代表チームの戦いを表現したことがある。サッカーはシンプルなゲームだ。
類まれな能力と効率的なゲーム運び、洗練されたプレイは、確かにドイツという国のイメージに合致する。そして、メルセデス・ベンツというブランドにも。
現在のEクラスの祖先となるW114とW115型は、今回の8台では新車当時に最も高価なモデルだった。他方で1960年代のメルセデス・ベンツでは、エントリーモデルに相当した。
第二次大戦後、白紙の状態から設計・デザインされた同社初のモデルで、W114・W115型のシャシーはその後20年間も様々なモデルのベースになった。特徴といえたのは、トレーリングアーム式のリア・サスペンション。大幅に安定性を高めていた。
かといって、スポーティさは求められていない。サスペンションのスプリングは適度にソフトで、乗り心地は優しい。カーブではボディが大きく外側へ傾くが、想像以上のペースを保って駆け抜けられる。
専ら直列4気筒エンジンが載ったW115型は、上級サルーンやタクシーとして活躍した。一方で直列6気筒エンジンが載ったW114型は、よりエレガント。特にピラーレス・クーペはその象徴といえる。
現代のモデルに通じる秀でた印象
スタイリングを手掛けたのは、デザイナーのポール・ブラック氏。今でも注目度は高い。公道での取材時は、年齢を問わずスマートフォンのカメラが向けられていた。
150psを発揮し、8台では最もパワフル。250CEの4速ATはキビキビと変速するが至ってシームレスで、加速には段付きがない。
1968年式でありながら、現代のモデルに通じる秀でた印象を味わえる。ノイズもバイブレーションも最小限に抑えられ、能力や技術の高さを静かに物語る。
装備も最先端だった。パワーウインドウと電動サンルーフだけでなく、助手席側が独立したデュアルゾーン・エアコンも備わっていた。上質なアームレストに、美しいウッドパネルが与えられ、インテリアの高級感にも感心する。
ドライビングポジションは完璧だし、ブレーキの制動力も確実。すべてが、250CEに乗る人へ確かな自信を与えてくれる。
ただしステアリングラックは、もう少し精度の高いアイテムを選べたかもしれない。エンジンの能力を一層引き出せるトランスミッションも、メルセデス・ベンツなら検討できたように思う。
動的能力はそこまで高くもない。充実した装備のおかげで車重は増え、250CEは1395kgもある。走り出すと、その重さを実感する。冷静沈着に戦うドイツ代表チームのように、メルセデス・ベンツも慌てることなく運転するのがベターなようだ。