フォード・ファルコン xメルセデス・ベンツ250CE ワールドカップ優勝国のクルマ 8台を比較(2)

公開 : 2022.12.29 15:05

ドイツ:メルセデス・ベンツ250CE

W杯優勝:1954年、1974年、1990年、2014年

「22人の選手が90分間1つのボールを追いかけ、ゴールを狙う。最後はドイツが勝つ」。と、イングランドの元代表選手だったゲーリー・リネカー氏はディー・マンシャフト、ドイツ代表チームの戦いを表現したことがある。サッカーはシンプルなゲームだ。

類まれな能力と効率的なゲーム運び、洗練されたプレイは、確かにドイツという国のイメージに合致する。そして、メルセデス・ベンツというブランドにも。

メルセデス・ベンツ250CE(1968〜1976年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ250CE(1968〜1976年/英国仕様)

現在のEクラスの祖先となるW114とW115型は、今回の8台では新車当時に最も高価なモデルだった。他方で1960年代のメルセデス・ベンツでは、エントリーモデルに相当した。

第二次大戦後、白紙の状態から設計・デザインされた同社初のモデルで、W114・W115型のシャシーはその後20年間も様々なモデルのベースになった。特徴といえたのは、トレーリングアーム式のリア・サスペンション。大幅に安定性を高めていた。

かといって、スポーティさは求められていない。サスペンションのスプリングは適度にソフトで、乗り心地は優しい。カーブではボディが大きく外側へ傾くが、想像以上のペースを保って駆け抜けられる。

専ら直列4気筒エンジンが載ったW115型は、上級サルーンやタクシーとして活躍した。一方で直列6気筒エンジンが載ったW114型は、よりエレガント。特にピラーレス・クーペはその象徴といえる。

現代のモデルに通じる秀でた印象

スタイリングを手掛けたのは、デザイナーのポール・ブラック氏。今でも注目度は高い。公道での取材時は、年齢を問わずスマートフォンのカメラが向けられていた。

150psを発揮し、8台では最もパワフル。250CEの4速ATはキビキビと変速するが至ってシームレスで、加速には段付きがない。

メルセデス・ベンツ250CE(1968〜1976年/英国仕様)
メルセデス・ベンツ250CE(1968〜1976年/英国仕様)

1968年式でありながら、現代のモデルに通じる秀でた印象を味わえる。ノイズもバイブレーションも最小限に抑えられ、能力や技術の高さを静かに物語る。

装備も最先端だった。パワーウインドウと電動サンルーフだけでなく、助手席側が独立したデュアルゾーン・エアコンも備わっていた。上質なアームレストに、美しいウッドパネルが与えられ、インテリアの高級感にも感心する。

ドライビングポジションは完璧だし、ブレーキの制動力も確実。すべてが、250CEに乗る人へ確かな自信を与えてくれる。

ただしステアリングラックは、もう少し精度の高いアイテムを選べたかもしれない。エンジンの能力を一層引き出せるトランスミッションも、メルセデス・ベンツなら検討できたように思う。

動的能力はそこまで高くもない。充実した装備のおかげで車重は増え、250CEは1395kgもある。走り出すと、その重さを実感する。冷静沈着に戦うドイツ代表チームのように、メルセデス・ベンツも慌てることなく運転するのがベターなようだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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