プーマGTE xアルファ・ロメオ1750 GTV ワールドカップ優勝国のクルマ 8台を比較(4)

公開 : 2023.01.02 15:05

アルゼンチンが優勝した2022年のワールドカップ。英国編集部では、過去にW杯で勝利を掴んだ8か国のクラシックを比較しました。

ブラジル:プーマGTE

W杯優勝:1958年、1982年、1970年、1994年、2002年

サッカー・ワールドカップの優勝回数が最多のブラジル。1960年代から1970年代のクルマの代表も、身体能力に長けたモデルが選ばれた。プーマGTEが発売されたのは1970年だが、同年にサッカーの神様と称されるペレは、見事なゴールで優勝に導いている。

初耳という読者も多いであろうプーマは、1964年にイタリア系移民のリノ・マルゾーニ氏が創業した小さな自動車メーカー。実は今も存在している。

右からアルファ・ロメオ1750 GTVとプーマGTE
右からアルファ・ロメオ1750 GTVとプーマGTE

当初はDKW(現アウディ)のプラットフォームを流用していたが、1967年にフォルクスワーゲン傘下になったことをきっかけに、ビートルのプラットフォームへ変更。独自のスポーツモデルを生産した。

GTEは1970年に欧州へ輸出が始まり、1973年から1974年には英国でも売られていた。ちなみに、本来のモデル名はGT。Eはエクスポート(輸出)を意味していた。かなりの低価格だったが、欧州市場で成功することはなかった。

スタイリングはカッコいい。小さなサイズに曲線的なダイナミックさが表現されている。当時としてはモダンで、イタリアン・カロッツエリアの作品に見えなくもない。リアエンジンのビートル・ベースだということを感じさせない。

ルックスだけではない。プーマの技術者は、ビートル1302S用の1584cc空冷水平対向4気筒エンジンをチューニング。圧縮比を7.5:1から9:1へ上昇させ、ツイン・ソレックスキャブレターを組み、最高出力を60psから91psへ高めていた。

車重は700kgと軽く、0-97km/h加速は9.9秒。最高速度は177km/hと、まったく不足ないパフォーマンスを発揮した。

動力性能は今回の8台でトップクラス

GTEは装備も充実していた。ダッシュボードはフェイクウッドのパネルで飾られ、スピードメーターだけでなくタコメーターも配置。ステアリングホイールはスポーティな3スポークで、マップランプも付いていた。

英国価格は左ハンドル車で当時2200ポンド。右ハンドル車の場合、改造費用が加わり2350ポンドだった。

プーマGTE(1970〜1980年/南米仕様)
プーマGTE(1970〜1980年/南米仕様)

さらにGTEは、南アフリカでも製造された。今回ご登場願ったのは、そのシリーズ1の1台。269台がラインオフしているが、こちらはビートル1500用のフロアパンをベースにしている。

このレッドのGTEは、オーナーがかなり手を加えている。サスペンションはボールジョイント化され、エンジンは2.1Lへ排気量を増大。最高出力は約120psということで、極めて活発だった。楽しくて、運転中は笑いが止まらなかったほど。

ドライビング体験にはオリジナル・ビートルの香りが残るが、シングルマフラーのエッジの効いたノイズがそれを忘れさせる。サーキットでも、グリップ力は充分以上だ。

カーブへ突っ込むとアンダーステアが顔を出すものの、アクセルペダルをわずかに緩めると自然にラインが内側へ絞られる。気難しい挙動は一切ない。

ステアリングホイールは適度に重く、フィードバックが豊かに伝わる。動力性能も、今回の8台ではトップクラス。強豪国の代表モデルも、なかなかの強豪といえそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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