セアト850 xグルメット・インディアナ ワールドカップ優勝国のクルマ 8台を比較(3)

公開 : 2022.12.30 15:05

ウルグアイ:グルメット・インディアナ

W杯優勝:1930年、1950年

余程のクルマ好きでも、ウルグアイの自動車メーカーは思い浮かばないだろう。グルメット・インディアナは、数少ないその精鋭の1台になる。

ただし、英国では入手困難。代役として、その祖先に当たるヴォグゾール(英国オペル)・ビバ HCエステートを用意した。グルメットはヴォグゾールと同じGM傘下のメーカーで、GMウルグアイがライセンス生産したモデルがインディアナだった。

ヴォグゾール・ビバ HCエステート(英国仕様/グルメット・インディアナ)
ヴォグゾール・ビバ HCエステート(英国仕様/グルメット・インディアナ)

ベースは、1970年に発売されたヴォグゾール・ビバ。なんとオリジナルのボディを原型にFRPでボディを成形し、チューブラーフレームのシャシーに載せられていた。少なくとも見た目は、ヴォグゾールに近かった。

ドライブトレインとプラットフォームは、オペル・カデットBから流用。フロントグリルは専用品で、ヘッドライトは今回のビバとは異なり丸目。前後のバンパーも独自のデザインで、テールライトはビバ HBのものが取り付けられていた。

インディアナはビバより約10cmもトレッドが狭かった。今回の写真とは異なり、かなりアンバランスに見えただろう。

動的能力では、ビバ HBから大きなビハインドがあった。GMウルグアイが輸入したカデットB用の1080ccプッシュロッド・エンジンは、5600rpmまで回しても56psしか生み出さなかった。

サスペンションはカデットBのままで、内容は悪くはない。フロントは独立懸架式にコイル、リアはリジッドアクスルにリーフスプリングという組み合わせだった。

インテリアは当時のGM車らしい雰囲気

1972年に発売されたインディアナはウルグアイで一定の人気を博し、2年間で4968台が売れている。GMウルグアイは、FRPボディをシボレーコルベットと同じ構造だと表現したことが、プラスに働いたのかもしれない。

今回用意したビバ HCエステートには1800ccエンジンが載っており、動力性能に関しては比較にならない。この例の場合はトルクが太い。最高出力が50%劣り、タイヤがボディの内側に引っ込んでいる状態を想像するしかない。

ヴォグゾール・ビバ HCエステート(英国仕様/グルメット・インディアナ)
ヴォグゾール・ビバ HCエステート(英国仕様/グルメット・インディアナ)

少なくとも、インテリアが当時のGM車らしい雰囲気を漂わせていたであろうことは、このビバ HCから感じ取れる。車内は装備が整い、ドライビングポジションも良好。シフトレバーのストロークは長い。

操縦性より、乗り心地を重視したシャシー設定にある。真っすぐ走っている状態が1番好ましい。

ビバ HCは強固なモノコック構造だったが、FRPボディだったインディアナのボディ剛性がどの程度なのかも、考えを巡らせるしかない。少なくとも、オリジナル以上ではなかったはずだ。

セアト850とグルメット・インディアナのスペック

セアト(フィアット)850(1966〜1974年/欧州仕様)

英国価格:859ポンド(新車時)/5000ポンド(約83万円)以下(現在)
販売台数:66万4346台
最高速度:125km/h
0-97km/h加速:23秒
燃費:14.2km/L
CO2排出量:−
車両重量:670kg
パワートレイン:直列4気筒843cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:34ps/4800rpm
最大トルク:5.5kg-m/3200rpm
ギアボックス:4速マニュアル

グルメット・インディアナ(1972〜1974年/南米仕様)

英国価格:−(新車時)/−(現在)
販売台数:4968台
最高速度:−
0-97km/h加速:−
燃費:−
CO2排出量:−
車両重量:872kg
パワートレイン:直列4気筒1080cc自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:56ps/5600rpm
最大トルク:8.6kg-m/2800-3600rpm
ギアボックス:4速マニュアル

フィアット(セアト)850(1966〜1974年/欧州仕様)
フィアット(セアト)850(1966〜1974年/欧州仕様)

この続きは(4)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 執筆

    サイモン・ハックナル

    Simon Hucknall

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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