速度を問わない充足感 ケータハム・スーパーセブン 600へ試乗 スズキの3気筒660cc

公開 : 2022.12.29 08:25

走行速度に関係なく充足感で満ちる

発進すると、アクセルオフでターボのウェストゲート・バルブが鳴る。見た目の雰囲気には少し合致しないかもしれない。回転数を高めても、聞き惚れる歌声へ変化するわけでもない。

アクセルペダルに対する反応は若干マイルドで、パワーデリバリーはターボの過給圧で変化する。自然吸気のスーパーセブンには、レスポンスでは及ばない。

ケータハム・スーパーセブン 600(英国仕様)
ケータハム・スーパーセブン 600(英国仕様)

だとしても、限られた最高出力ながら、夢中になれるペースで走れるパワーはある。パワーバンドは狭く、小気味よく変速できる5速マニュアルを巧みに操る必要があるが、むしろそれが楽しい。

0-100km/h加速は6.9秒でこなす。実際に試してみると、数字以上に速く感じられる。他のスーパーセブンと同様に。

4気筒エンジン版よりフロントが軽いだけに、ステアリングホイールを回すのに大きな筋力は必要ない。エイボンの小ぶりな接地面積はグリップ力が限定的だが、85psとバランスは取れている。公道の速度域で、存分に振り回せる。

ステアリングホイールの指先の操作へ、フロントはもれなく反応。カーブへ勢いよく侵入すれば、耐えきれなくなったタイヤが自然に外へ流れ出す。ドライバーの自信を奪うことはない。走行速度に関係なく、充足感で満ちる。

折角だから、筆者なら1250ポンド(約21万円)のリミテッドスリップ・デフは付けるだろう。アクセルペダルでのライン調整が一層しやすくなり、コーナー内側のタイヤがスピンして逃げるパワーを受け止められる。

高いエネルギー効率と豊かな興奮度の両立

リジッドアクスルのリアは、スーパーセブン 2000ほどしなやかな足の動きを得ていない。路面の起伏次第では跳ねるような挙動も出る。とはいえ、ドライビング体験を台無しにするほどではない。基本的に乗り心地は柔らかく、姿勢制御は素晴らしい。

長距離ドライブへ旅立ちたいと思える洗練性すらある。燃費は良好で20.7km/L。1度の満タンで480kmくらいは走りきってしまう。褒められるエネルギー効率と豊かな興奮度の両立は、今という時代へ見事に合致している。

ケータハム・スーパーセブン 600(英国仕様)
ケータハム・スーパーセブン 600(英国仕様)

スーパーセブン 600の英国価格は、完成車で3万2585ポンド(約541万円)から。半完成品のキットなら2万9990ポンド(約497万円)へ落ちるが、安いとはいいにくい。

しかし、ケータハムのデザインはノスタルジックでも、時間経過で価値が大きく減じることはない。1km毎に得られる笑顔の大きさで考えれば、訴求力は相当なものだと思う。

ケータハム・スーパーセブン 600(英国仕様)のスペック

英国価格:3万2585ポンド(約541万円・完成車)/2万9990ポンド(約497万円・キット)
全長:3100mm
全幅:1470mm
全高:1090mm
最高速度:168km/h
0-100km/h加速:6.9秒
燃費:20.7km/L
CO2排出量:109g/km
乾燥重量:470kg(予想)
パワートレイン:直列3気筒660ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:85ps/6500rpm
最大トルク:11.8kg-m/4000-4500rpm
ギアボックス:5速マニュアル

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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