2psの小さな英国製EV ファイアフライ・スポーツへ(息子が)試乗 クルマへの興味の入口

公開 : 2023.01.03 08:25

英国で開発が進む、子ども向けの小さなEV。交通マナーを学ぶプログラムで活躍予定の試作車へ、英編集部の息子が試乗しました。

英国で設計・製造される子ども向けEV

必ずしもそうとは限らないが、子どもはいずれ親元を離れる。大学生や社会人になれば、自らクルマを運転する日もやってくる。そんな近未来を想像すると、複雑な気持ちになるという読者は多いだろう。

待ち遠しくもあるが、筆者の場合は12年も先の話。息子のアーチーは、まだ大学生にもなっていない。

ファイアフライ・スポーツ(英国仕様)
ファイアフライ・スポーツ(英国仕様)

それでも真っ赤なスポーツカーのステアリングホイールを握り、フォトグラファーのピアス・ワードが身体を乗り出した、シトロエンベルランゴを追走していく。このバッテリーEV(BEV)に彼が初めて座ったのは10分前だが、既に乗りこなしている。

息子は誇らしげだ。筆者も不安心が半分ながら誇らしい。クルマを運転するという技術で息子に並ばれたような気がして、少しむず痒い。試乗車にもベルランゴにも、擦り傷1つ残さず撮影を終了させてほしいところ。

アーチーが生まれて初めて運転したクルマは、ファイアフライ・スポーツという子ども向けのバッテリーEV(BEV)。英国で展開される、17歳以下が対象のヤングドライバー・モーターカーズ・プログラムのために開発されたそうだ。

子どもたちが道路へ出る前にクルマへ興味を持ち、慣れてもらうことを目的とした活動で、開発にはアストン マーティンジャガーランドローバーなどで働いてきた技術者が関わっている。その仕上がりは通車並みに上質だ。

アストンやジャガーの元技術者が開発

ファイアフライは英国で設計・製造されており、シャシーは完全にオリジナル。全体の98%が国産だという。駆動用バッテリーも。輸入部品はライトとシートだが、プログラム・ディレクターのイアン・ムリンガニ氏は、これも英国製にしたいと考えている。

シャシーはアルミニウム製のスペースフレームで、モジュール化されている。ムリンガニがオフロード・モデルも必要だと考えたら、全長を長くし、車高を高くすることも難しくない。実際に検討中らしい。

ファイアフライ・スポーツ(英国仕様)
ファイアフライ・スポーツ(英国仕様)

サスペンションは調整可能な独立懸架式。ステアリングラックにはラック&ピニオン式を採用し、乗り心地や操舵感は実際のクルマへ近づけてある。

リア側に2基搭載される駆動用モーターは、グレートブリテン島の南部、ボーンマスという街で製造されている。駆動用バッテリーもシートの後ろにある。

アストン マーティンの技術者だったというスティーブ・ローソン氏によれば、このレイアウトで前後の重量配分を最適化できるという。また、セル単体で別れた駆動用バッテリーのメンテナンスも容易になるとのこと。

子どもが乗ることを前提に、最高出力を2ps以下に調整するパワーアジャスターと、リモートで操作できるキルスイッチも付いている。もしアーチーが運転を間違っても、後ろを走るローソンがファイアフライを止めてくれる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ピアス・ワード

    Piers Ward

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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