わたしの愛した12台 元マクラーレンCEOの人生を変えたクルマとは 生粋のエンスージアストが選ぶもの

公開 : 2023.01.02 19:05

フォード・フォーカス 1.6(2003年)

フルウィットは4年間Autonovaを経営したが、フォードがボルボを買収し、TWRの株式を買い取ると、当初はTWRに残ることを選んだ。ミアは、同じくTWRの事業である初代ルノー・クリオV6を担当し、マイクはホールデンやルノーなど、さまざまな仕事に取り組んでいた。

しかし、1年半後にTWRが経営危機に陥ると(アロウズF1チームとの関わりで無理をしていた)、彼は2003年に品質責任者として欧州フォードに復帰する。その結果、1.6Lの初代フォード・フォーカスを購入することになった。

フォード・フォーカス1.6
フォード・フォーカス1.6

「あのクルマで、私はフォードをリスペクトするようになりました。コントロールウェイト、ステアリング、運転というシンプルな体験、すべてが新しいレベルにあったのです。フォーカスは、わたしにクルマの魅力を教えてくれた、極めて重要なクルマです。今でも買おうかなと思っているぐらいですよ」

ロータス38(1965年)

フォードの故郷デトロイトを訪れたフルウィットは、有名なヘンリー・フォード博物館に足を運ぶ。この体験が彼の趣味を「奇妙な方向へ大きな一歩を踏み出す」きっかけになったという。彼が目にした展示品の中には、ジム・クラークが1965年のインディアナポリス500で、従来のオッフェンハウザー・エンジン搭載車「ロードスター」をすべて破って優勝した、フォードV8エンジンのロータス38があった。

「今日、世界で1台だけクルマを選べと言われたら、あれを選ぶでしょう。クラークの腕とロータス38の性能は、インディの世界をひっくり返したようなものです。伝統的なロードスターが再び勝つことは二度とないと思います」

ロータス38
ロータス38

ロータス・エランS1(1964年)

フォードに戻ったフルウィットは、段々とロータスへの愛着を抑えきれなくなった。2005年、彼は「1964年に作られたばかりのような状態にレストアする」ことを目的に、イエローカラーの初代エランを購入する。

このとき、ロータスのエキスパートであり、その後のレースパートナーでもあるニール・マイヤーズと知り合うことになる。マイヤーズの父親は、ノーサンプトンで長年にわたってロータスのディーラーを経営していた人物である。レーサーとして成功していたニールは、約1年かけてエランを修復。今でもフルウィットのガレージで大切に保管されている。

ロータス・エランS1
ロータス・エランS1

「エランは、わたしが最後に売るクルマです。軽快で、俊敏で、バランスは完璧、乗り心地も素晴らしい。でも、決して過保護にしているわけではありません。今年(2020年)もたくさん走らせました。サーキット走行もしたし、ベルギーでも走らせたし、好きなように使っています。今でも素晴らしいコンディションを維持していますが、ニールが言うように、またいつでもレストアできるんです」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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