わたしの愛した12台 元マクラーレンCEOの人生を変えたクルマとは 生粋のエンスージアストが選ぶもの

公開 : 2023.01.02 19:05

マクラーレンMP4A(1967年)

エランのレースに出会ったフルウィットは、フォーミュラ・ジュニアのシングルシーターへの参戦を考え始める。そこでジュニアを試乗したところ、「ダイレクト感が気に入った」ため、参戦を決意した。ロータス18、20、22などがマシン候補に上がりそうだが、470kgのボディに240psのコスワースFVAエンジンを搭載した元ピアーズ・カレッジのマクラーレンF2マシンを提供され、購入した。

「シルバーストンのハンガーストレートを走るのはスリリングでした。オウルトン・パークでのゴールド・カップ(18台中9位)も含め、何度かレースに参加しました。でも、速すぎてわたしの限界だったんです。もっと速く走れるようになるには、もっとプッシュしなければならないし、リスクも伴います。ジミー・クラークがこんなクルマでレースをして命を落としたなら、わたしもそうなるはずだと思い、クルマを売りました。面白かったですし、やってよかったとは思いますが、スポーツカーがわたしの性分なんです」

マクラーレンMP4A
マクラーレンMP4A

マクラーレン570S GT4(2017年)

写真のGT4レーサーは、フルウィット夫妻のマシンだ。レースを始めて以来、ミアはハイパワーカーに驚くべき適性を発揮し、社内のピュア・マクラーレンGTシリーズで2度優勝するなど、5年でトップレベルのアマチュアレーサーとなった。

彼女は現在、ブリティッシュGT選手権のトップ候補であり、特別なフィットネス・プログラム、テスト、スポンサーシップを受け、レースに専念している。

マクラーレン570S GT4
マクラーレン570S GT4

「もともと別のクラシックカーを買おうと思っていたのですが、ミアはもっとパワーを求めていました。彼女はパワーとパフォーマンスを愛していて、V8があれば何でも解決するんです。彼女はCanAmのレースに出たいと言い出したのですが、わたし達の知る限り、女性が出ることは難しいでしょうし、あまり安全とは思えませんでした。そこでGT4のアイデアを思いついたんです。それ以来、ミアは夢中になっていますよ。わたし達はレースが大好きで、GT4は非常に速いのですが、マクラーレンの市販車との強いつながりがあるのです」

ロータス・マークIX(1955年)

ロータスを愛し、その歴史を研究し続けるフルウィットは、1950年代半ばにわずか27台しか作られなかった希少なクルマを最近購入した。

ロータス・マークIXは、実質的に、ブランド初の本格的な量産車マークVIのエアロダイナミック仕様である。フルウィットのマシンは完全なオリジナルで、1956年のチャンピオンシップで優勝し、パンフレットの表紙を飾ったこともある(当然、彼もそのコピーを持っている)。当時、コベントリー・クライマックスFWAエンジンの出力は75psだった。しかし、スチール鍛造のボトムエンドを持ち、高回転が可能になったため、95psにパワーアップしている。

ロータス・マークIX
ロータス・マークIX

「200km/hの速度に対応し、信じられないほど安定しています。わたしのクルマは公道登録されていますが、公道ではちょっと変な感じがします。というのも、宇宙船が着陸したのかと思われるほど異様な姿をしているからです。それに、公道ではプッシュできないので、少し物足りなくなります。でも、サーキットの上では、とてもいい感じですよ」

……長い話を終えて、筆者はこの12台を、実に多彩なクルマたちだと思った。フルウィットには、まだ他に欲しいクルマがあるのだろうか。

「そうでもないんですよね」と、彼はしばらく考えてから言った。「数年前なら、ロータス25やロータス49のシングルシーターが欲しかったかもしれませんが、マクラーレンMP4Aに触れて、その考えは変わりましたよ。V8エンジンを搭載したスポーツカーで、1勝しかできなかった不遇のロータス30が気になるときがあります。ニールと2人で作れないだろうか、とね。できるかもしれませんが、そのチャンスがあるかどうかはわかりません」

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    AUTOCAR UK Editor-in-chief。オフィスの最も古株だが好奇心は誰にも負けない。クルマのテクノロジーは、私が長い時間を掛けて蓄積してきた常識をたったの数年で覆してくる。週が変われば、新たな驚きを与えてくれるのだから、1年後なんて全く読めない。だからこそ、いつまでもフレッシュでいられるのだろう。クルマも私も。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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