何か良いことあった? 2022年振り返り 海外の自動車ライターが選ぶ「最高の思い出」
公開 : 2022.12.31 15:05
イリヤ・ブラパート
星のまたたく夜、素晴らしいドライブができた。わたしはノース・ヨーク・ムーアズ国立公園におり、そこからクルマを交換して空港に向かう必要があったので、少し急いでいたのだ。グーグル・マップは高速道路を無視し、交通量の少ない、アップダウンの激しい曲がりくねった裏道を走らせた。
それは至福の時間だった。コーナーに次ぐコーナー、見通しの良い道、タイトなマニュアル・トランスミッション、働かせなければならないエンジン、「ヒール&トゥ」が可能な完璧なペダル配置……。
運転していたのはダチア・ジョガーだ、というのはもう話したかな? わたしは、この格安の7人乗りミニバンが、英国一のドライバーズカーだと主張するつもりはない。しかし、多くの人が予想するよりもはるかに運転しやすく、また今回のルートも良かった。免許証を危険にさらすことなく、公道で激しく運転できるクルマの素晴らしさについては、わたしは黙っちゃいられない。
フェリックス・ペイジ
僕は助手席に乗るのが大の苦手だ。だから、最高出力830psのフェラーリ296 GTBでモンテブランコ・サーキット(全長約4kmのスペインのサーキット)を走る前に、(当然だが)プロの操縦するクルマの助手席でコースを学ぶと知らされたとき、僕の心は揺さぶられた。
そして、元F1ドライバーで2009年のル・マン優勝者のマルク・ジェネが現れ、僕と握手を交わして運転席に乗り込んだ。これはもう、どうしようもないことだった。しかし、この3分間で、僕の中の内燃機関自動車に対する概念は、大きく塗り替えられた。僕の自動車評価の原型を手に入れた瞬間である。
左耳の後ろでV6がその存在を声高に主張し、最初のコーナーで僕を放り投げると、華々しいプレスリリースも一緒にどこかへ飛んでいってしまう。電気モーターがシフトチェンジの遅れをカバーして一定の加速を確保すると、電動アシストに対する偏見は消え去り、マルク・ジェネがステアリングホイールを180度回転させて正確かつ爽快なターンを決めると、1.5トンの車重に対する意識は消えてしまう。
公道でも、スーパーカー以外の乗り物でも味わえない感覚に、毎日もう一度やり直したいと思うほど夢中になる。
リチャード・レーン
内なる10歳の僕は、4月にランボルギーニ・アヴェンタドール・ウルティマエのレビューをするために、ボローニャの南にある丘陵地帯でのドライブを楽しんだ。
でも、本当に面白かったのは、ランボルギーニが用意したウラカンSTOで、暖かい天候に見合わず冬用タイヤが装着されていたことだ。結果はいい意味で笑ってしまうもので、トヨタ86に最高出力640psの3.0L直6ツインターボを載せた2012年のドリフトレーサーに似ている。もちろん、エンジンもすごい。そして、そのシャシーもまた素晴らしい。STOのオーナーさん、Pゼロ・トロフェオRはいいとして、ウィンタースポーツ・ソットゼロを履かせてはいかがだろう?
34歳の僕はというと、フェラーリ296 GTSの発表会で、運良くパワートレイン開発責任者のクリスティアーノ・ポンプッチ氏とディナーで隣り合わせになった。彼は新型3.0L V6の開発を担当した人物で、シューマッハ時代の後半にはエンジンアナリストも務めていた。
F1での経験をもとに、レースに向けてどんな小さなパワーアップでもいいから実現しなければならない、というプレッシャーについて話を聞くのは、とても楽しい時間だった。ポンプッチ氏のような人が900psのV10からさらに5ps引き出したことを、シューマッハが瞬時に見抜いたという話を聞くと、鳥肌が立つ。この仕事には、素晴らしい人脈があるものだ。
画像 2022年、自動車ライターの思い出に残ったクルマたち【マクラーレンGTやフェラーリ296 GTBなどを写真で見る】 全87枚