AMG EQS 53が、Sクラスを超えた「部分」 BEVがメルセデス最上級セダンを変える!

公開 : 2022.12.28 20:45  更新 : 2023.01.05 13:30

知っておきたい最小回転半径

低全高で大容量バッテリーを床下に収納。当然、プラットフォームは新規開発されたもの。

エアサスを採用した電子制御サスの採用など、メルセデス車の上級クラスのセオリーにも則っている。450+に対しては専用サスチューンの他にリア・アクスルステアリングの大舵角化型を標準採用する。

450+の後輪操舵は舵角4.5°が標準。それに対し、53 4マティック+は舵角9°が標準採用。
450+の後輪操舵は舵角4.5°が標準。それに対し、53 4マティック+は舵角9°が標準採用。    神村聖

リア・アクスルステアリングはタイトターンでの旋回性と高速コーナリングでの安定性を向上する操安志向の電子制御システムだが、大舵角型は実用性向上アイテムでもある。

EQSは全長は5225mm、ホイールベースは3210mmにもなるが、EQS 53の最小回転半径は5.3mでしかなく、なおかつ逆位相後輪操舵で小回りを稼いでいるので、ホイールベースに対して内輪差も少ない。

小回りはメルセデス車の特徴の1つでもあり、それを裏切らない取り回しのよさも実感できた。

乗り心地について

“電子制御も使い方次第”は前項でも述べたが、走りに対して一本筋を通しているかのように、フットワークもまた「高性能と肌触り」あるいは「感性との馴染みよさ」を主眼としている。

どっしりと腰の据わった乗り心地。近年のAMG車は乗り心地への気配りも利いている。

メルセデスAMG EQS 53 4マティック+の後席(内装色:ブラック/バラオブラウン:AMGナッパレザー)
メルセデスAMG EQS 53 4マティック+の後席(内装色:ブラック/バラオブラウン:AMGナッパレザー)    神村聖

最もスポーティなドライブモードのスポーツ+も含めてしなやかなストローク感があり、加減速やコーナリングのGの高まりと速度域に応じて程よく引き締める。無駄な硬さがない。

モードによる変化は初期値設定とG増への対応の早さが主であり、コンフォートモードでは「意外としっかり」、スポーツ+では「意外と快適」という印象に繋がる。

走りの「安心感」と「質」を高める乗り心地と操安性の予兆と余韻の取り方は出色の出来だ。

新時代のサルーン 価格も頂点

価格は、「450+」の794万円高の2372万円。

日本で展開するSクラスの最上位モデルとなる「S 580 4マティック・ロング」が2080万円、ショーファードリブン志向のマイバッハを除けばメルセデス車のセダン系では「メルセデスAMG EQS 53 4マティック+」が価格面での最上位モデルとなる。

メルセデスAMG EQS 53 4マティック+(ハイテックシルバー)
メルセデスAMG EQS 53 4マティック+(ハイテックシルバー)    神村聖

ちなみに「EQS」「EQE」以外のセダン系AMG車では1405万円のE53 4マティック+が最高価格車だが、AMG車の頂点にBEVというのも時代を感じさせる。

その投資価値は、Sクラスを上回る良質な乗り味と圧倒的な信頼感。

それらはパワートレインを筆頭に4輪の駆動制動力配分やサスストロークの能動的制御、4輪操舵など運動性と快適性を司る機構の巧みな電子制御に支えられている。

“機械と電子制御の最適なマリアージュ”という意味でも近未来のクルマを実感させてくれた。電動時代にSクラスが、あるいはAMG車がどうなるかを予感させるモデルである。

充電インフラの不便さや601kmの満蓄電航続距離(WLTCモード)などの短所はあるにしても、メルセデス車の最上級サルーンの形がBEVにより進化。良質とか品格を基本に置いたBEVの頂点モデルなのだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

思わず二度見のデザイン ベンツ最上位EV試乗の前後関係

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