【実際に購入レポート】ポルシェ・タイカンの長期テスト(13)国内の充電設備 設置の現状/今後の展開

公開 : 2022.12.31 17:45  更新 : 2023.03.16 01:19

AUTOCAR JAPANの笹本健次編集長のポルシェ・タイカン購入レポート。株式会社e-Mobility Powerを訪ね、充電設備状況と今後の展開を取材しました。

株式会社e-Mobility Powerへ

先日、現状の日本国内の充電設備状況と今後の展開について理解を深めるため、充電インフラ整備を強力に展開している株式会社e-Mobility Powerを訪ねた。

この会社の株主は、東京電力、中部電力、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車、日本政策投資銀行であることからも、国内で最大、最強の充電設備普及会社である事が判ろう。

現状の日本国内の充電設備状況と今後の展開について理解を深めるため、充電インフラ整備を強力に展開している株式会社e-Mobility Powerを訪ねた。
現状の日本国内の充電設備状況と今後の展開について理解を深めるため、充電インフラ整備を強力に展開している株式会社e-Mobility Powerを訪ねた。

現地では、企画部事業統括部長の花村様よりお話を伺ったが、私が実際にEVに乗って経験を積んでいるため、実態に即したかなり突っ込んだ話を聞くことが出来た。

その全てをここで紹介する事はできないが、掻い摘んで紹介してみよう。

国内の充電設備 設置の現状

まず、現在、国内には国の補助金と自動車4会社の資金により約3万基(普通充電器2万1198基、急速充電器8265基)のEV用充電器が設置されているが、その設置場所はバラツキがあり、まだ、地方では15km四方に1基も充電器がない空白地域がかなり存在していて、逆に都市部では、設置数は多いものの有料駐車場や自動車販社に集中していて、使い勝手が悪いのが現状である。

しかもそのうちの大半が3kWの普通充電器と50kW以下の急速充電器で、特に急速についてはパワー不足と劣化の問題があり、リプレースが推奨されている。

この状況から、新たな将来の目標としては、2030年までに15万基の公共充電器と1000基の水素ステーションの整備を目指すことが設定された。

充電インフラの整備については大きく基礎充電、経路充電、目的地充電の3タイプに分類され、それぞれに様々な問題が提起されている。

基礎充電は、自宅やマンションなどEVの所有者が住んでいる場所での日常繰り返す充電のことで、個人宅の場合は電力量のチェックをしたうえで普通充電器を設置すれば問題ないが、マンションでは駐車場に設置する場合、管理組合の決議が必要となり、導入コストについても誰がどのように負担するのかの問題が生ずる。

また、駐車場への設置数や方法についても十分な協議が必要である。この辺りは、合意形成のための決議の方法の改正が必要になるだろう。

マンションでの設置については国の補助金の対象であるため、設置を検討するところが増加しており、また、新築では、既に設置済みという施設も出てきている。

充電容量でも、国産の「日産サクラ」などの軽では大きな問題にならないが、大容量のバッテリーを持つ最近の輸入車などでは最低6kWの充電器の設置が望ましい。

しかし、この場合は、家屋全体の電気容量の計算が必要となって来る。無論、ポルシェの8kWやテスラの9.5kWであれば更に利便性は高いが、それなりの初期費用とランニングコストは掛かる。

経路充電、すなわち目的地に行く途中での充電では、基本的に急速充電器が、しかも可能な限り大容量の充電器が必要で、高速道路のSAなどで初期に設置された50kW以下の急速充電器の入れ替えと、設置数の増加が望まれている。

また、高速道路のSAでは充電渋滞の発生が大きな問題である。実際に私も先日、充電器の設置が1基しか無い東海北陸自動車道のひるがの高原SAでテスラとかちあい、充電をあきらめたことが思い出される。

一般的に言って、稼働率が20%を超えると渋滞が発生してしまうというデータがあるようで、都市周辺の高速道路のSAでは早急な対策が必要である。

この対策としては、現在、首都高の大黒パーキングにあるような6口タイプの200kW大容量の充電装置が計画されていて、これが全国に普及すれば、かなりの改善が見込めるはずだ。

この場合、補助金は1800万円まで出て、しかも必ず必要な高圧受電装置も対象に加えられる。

因みにEU諸国では、本国UKの編集部の記事でも記されているように、このタイプで200-350kWの充電器が設置され始めており、かの地とは、大きな落差がある。

空白地対策も、補助金の増額などで対処をしているが、じっさいのところ、需要が無いとなかなか設置に至らないのが現状であろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長、2024年8月より総編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。

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