意外なほど機械の味 マクラーレン・アルトゥーラに、現代のスーパーカーの形を見た!

公開 : 2023.01.01 11:25

マクラーレン・アルトゥーラを、サーキットでテスト。公道では検証できない領域で、どんな振る舞いを見せるのでしょう。PHEVスーパーカーとはいえ「機械の味」が魅力のようです。

最新マクラーレン 富士で検証

スポーツカーの頂点に君臨するスーパーカーにとっても、環境性能の向上は避けざるべき課題。ということでマクラーレン・アルトゥーラである。

マクラーレンと言えばF1。

富士スピードウェイの複合コーナーを攻めるマクラーレン・アルトゥーラ。
富士スピードウェイの複合コーナーを攻めるマクラーレン・アルトゥーラ。    神村聖

世代的な問題もあると思うが、筆者の場合はブルース・マクラーレンとデニス・フルムが真っ先に頭に浮かび、Cam-Amシリーズの活躍も。

生マクラーレンを始めて見たのは富士グラチャンのM12だった。座っただけだがアイルトン・セナのMP4のコクピットに収まったこともある。そんなマクラーレンを“富士スピードウェイ”で駆ることになろうとはそれだけで感激。ファン心がないまぜの試乗となった。

閑話休題。アルトゥーラのパワートレインは3L 120度V6ツインターボ/8速DCTを核にしたパラレル式ハイブリッド。外部充電機構も採用する、いわゆるPHEV(プラグインハイブリッド車)である。

GPF(排ガス微粒子フィルター)を備えるなど、超高性能の達成だけでなく、環境負荷軽減を配慮した現代的なパワートレインだ。

位が高ければ……の約30km

アルトゥーラが今日的なのはパワートレインだけではない。

マクラーレンでは初採用のEデフ(電子制御デフ)や電子制御ダンパーなどの電子デバイスを用いる。もちろん、ADASも備わり、クルマ自身が状況に応じた走りの最適化を行う「考えるクルマ」でもある。

とりわけ美しいのが横から見た姿ではないだろうか。モーター音だけで走り出す姿は「強者の優しさというか、ノブレス・オブリージュ(位高ければ、徳高きを要す)」と筆者。
とりわけ美しいのが横から見た姿ではないだろうか。モーター音だけで走り出す姿は「強者の優しさというか、ノブレス・オブリージュ(位高ければ、徳高きを要す)」と筆者。    神村聖

まずは電動走行。駆動モーターの最高出力は95ps(70kW)である。

Eモードを選択している状態ではバッテリー蓄電量が規定値以下になるまでは全開でも純電動走行を維持。すなわちMAX95psの走行。

立体的に成型されたカーボンモノコックの採用などにより車重は1.5tを切るのだが、電動の大トルクをしてもなお加速性能はほどほど。NA軽乗用相応といったレベルである。

それを欠点として挙げているわけではない。フル充電の航続距離は31kmだが、住宅地などの生活環境から幹線道路への繋ぎに用いるなら十分。リエゾンモードとでも考えられる。

要するに、周りに人・住宅が多い状況ではEモードで排ガスを吹きかけず静かに走行。強者の優しさというか「ノブレス・オブリージュ」というか、そんなマクラーレンの心構えなのだろう。

全開へ 200km/hを超えて 

試乗案内でピットアウトから1コーナー前までEモードを推奨されていたが納得。

ちなみにピットへ戻る時も自発的に最終コーナーからEモードを選択。人の多いところはEモードですよね、と独りごちる。

静止状態から3秒で100km/hに到達するパワートレインは、ゼロから新設計したもの。V6のPHEVながら車重は1.5t切り(1498kg)。
静止状態から3秒で100km/hに到達するパワートレインは、ゼロから新設計したもの。V6のPHEVながら車重は1.5t切り(1498kg)。    マクラーレン・オートモーティブ

そのせいかEモード時のドライバビリティは“電動感の演出”がほとんどない。

穏やかさと滑らかさの低中速域のコントロール性を主眼としたもので、ドライバーへも外部へも刺激を抑えたもの。状況に応ずれば十分な動力性能なのである。

最終コーナーを立ち上がって、横Gが完全に抜けた状態から全開。数秒で200km/hオーバー。

この試乗会では200km/h前後を制限速度としているので、その後はパナソニックブリッジ辺りまで200km/h強でのツーリング。

深く踏み込んで長々とした加速はヘアピンから300Rの区間くらいで、パーシャルスロットルでコントロールする時間が圧倒的に長い。

最大トルク発生回転数は2250-7000rpm。この回転数の間で全開にすれば約73kg-mのトルクが得られる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    神村聖

    Satoshi Kamimura

    1967年生まれ。大阪写真専門学校卒業後、都内のスタジオや個人写真事務所のアシスタントを経て、1994年に独立してフリーランスに。以後、自動車専門誌を中心に活躍中。走るのが大好きで、愛車はトヨタMR2(SW20)/スバル・レヴォーグ2.0GT。趣味はスノーボードと全国のお城を巡る旅をしている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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