アウディが後輪駆動? EV「Q4 eトロン」の走りをチェック グループのメリット活かす戦略車

公開 : 2023.01.03 11:25

車内は? 気に入ったところ

運転席に乗り込んでまず感じたのは、フロアが高くないこと。

日本仕様の最低地上高の数字は未発表なので、欧州仕様を参考にすると180mmとなっており、アリアbZ4Xと同等だが、体感的には明らかに高めのbZ4Xだけでなく、アリアより低く思えた。

アウディQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンストの前席(内装色:ブラック/ローズグレーステッチ)
アウディQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンストの前席(内装色:ブラック/ローズグレーステッチ)    アウディジャパン

インパネは操作系をVWほどタッチ化してないのはいい。

レバーを前後にスライドさせるドライブセレクターはシトロエンに似ており、使いやすかった。

メーターは最近のVWアウディに共通する仕立てで、外観同様BEVとしての新鮮さよりも、ブランドとしての統一感を重視しているようだ。

リアシートの座り心地は?

後席も床は低めで、しかもフラット。身長170cmの僕なら足は楽に組めるし、ルーフがスロープしたスポーツバックながら頭上も余裕がある。

535Lの容量を持つラゲッジスペースを含めて、パッケージ効率の高さを教えられた。ただし座面は傾斜があまりなく、背もたれは張りが不足していて、長時間ドライブは控えたいと思った。

アウディQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンストの後席(内装色:ブラック/ローズグレーステッチ)
アウディQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンストの後席(内装色:ブラック/ローズグレーステッチ)    アウディジャパン

走りはじめてエアコンがオンになっていないことに気づいてスイッチを入れたら、メーター内の航続可能距離の数字がガクッと下がった。他のBEVと同じ現象だが、それでも500km近い数字なのは心強い。

加減速に唐突感はなく、テスラのように“BEVらしさ”を前面に押し出したタイプではない。

力はエコモードでも問題なく、ダイナミックではその名のとおり俊敏なダッシュが得られる。回生ブレーキの程度はBレンジのほかパドルでも調節できて便利だ。

後輪駆動の走り どんな感じ?

低速ではウォーンという電動車独特の警告音がキャビンに届くのが気になるものの、スピードを出してそれが消えれば、ロードノイズの遮断も秀でていて、静かなクルージングが堪能できた。

乗り心地はややゴツゴツする。リアはシートがいまいちということもあり、特に感じる。

アウディQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンスト(グレイシアホワイトM)
アウディQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンスト(グレイシアホワイトM)    アウディジャパン

不快になるほどではないが、最近のアウディはまろやかな方向にシフトしつつあったので気になった。とはいえもうひとつのグレードであるSラインよりは快適だろう。

ハンドリングは、低速ではリア駆動ならではの旋回感が印象的。これまでのアウディではなかったフィーリングで、同様のドライブトレインを持つホンダeを思わせる。

戦略価格 アウディEVの強みに

速度を上げるとその感触は控えめになり、代わりに低重心で前後の重量バランスに優れるという、多くのBEVに共通する利点が味わえる。

狭い道では1850mmを超える幅が気になるし、リアドライブでありながら小回りが効くわけではないものの、同等のボディサイズのエンジン車と比べると、はるかに素直な身のこなしだ。

アウディQ4 eトロンの2022年導入時の価格は599万円~。12月より620万円となったが、そのタイミングで航続可能距離も18kmプラスの594kmとされた。写真はQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンスト(709万円)だ。
アウディQ4 eトロンの2022年導入時の価格は599万円~。12月より620万円となったが、そのタイミングで航続可能距離も18kmプラスの594kmとされた。写真はQ4 スポーツバック40 eトロン・アドバンスト(709万円)だ。    アウディジャパン

同クラスの日本勢に匹敵する620万円からという価格は、クルマの出来を考えれば魅力的だ。テスラのような新鮮さは薄いけれど、ジャーマンプレミアムブランドであることを重視すればお買い得と言える。

アウディはメルセデス・ベンツBMWの対抗として、クワトロによる安定性をアピールしてきた。

逆にエンジンへの依存度は低かった。なので電動化はアウディに合っていると感じた。

VWグループのスケールメリットを活かした価格は、その魅力を多くの人に伝えるきっかけになるかもしれない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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