なぜレクサスは欧州で覇権を握れないのか 半導体だけではない「苦戦」の理由

公開 : 2023.01.04 21:45  更新 : 2023.01.05 01:12

トヨタが展開する高級車ブランド、レクサス。日本をはじめ、北米や中国で人気を博していますが、欧州では好調と言えず、ジャガーやポルシェの後塵を拝しています。なぜ、レクサスは欧州で売れていないのかを考えます。

トヨタが誇る高級車ブランドの苦境

レクサスは、高級車ブランドに求められるものをすべて備えているように見える。今年、レクサスは3年連続で英国の自動車雑誌What Carの信頼性調査で首位に立った。レクサス車のオーナーはディーラーでの体験に満足し、2005年にハイブリッドを導入するなど電動ドライブトレインの分野でも大きく先行している。また、1998年に発売された「RX」を皮切りに、高級志向のSUVトレンドの最前線に立った。

では、なぜレクサスは欧州の消費者にいまだに響かないのだろうか? 一方、トヨタは欧州での市場シェアを過去最高に伸ばしており、このアンバランスを解消するためにレクサス欧州部門の全面的な見直しに着手している。

北米や中国では好調なレクサスだが、欧州では長らく苦戦続き。その理由とは?
北米や中国では好調なレクサスだが、欧州では長らく苦戦続き。その理由とは?

英国のロビー団体SMMT(自動車工業協会)によると、英国における11月末までのレクサス販売台数はわずか9034台で、苦境に立たされているジャガー(前年比31%減)にさえ遅れをとっている。最も好調だった2019年でさえ、1万5713台しか売れていない。

このように小規模であるにも関わらず、英国は他の欧州諸国と比較すると大きな市場であることに変わりはない。欧州のACEA(自動車工業会)によると、10月末までの欧州全体の販売台数は3万265台で、前年比27%の減少となっている。

「2022年はレクサスにとって非常に厳しい年だったことは否定できない」と、トヨタ・モーター・ヨーロッパを率いるマット・ハリソンCEOは11月末のメディア向けイベントで語っている。

欧州レクサス、売れない2つの理由とは

今問題になっていることの1つは、生産だ。欧州で販売するレクサス車はすべて日本製で、半導体不足で大打撃を受けているのだ。

今年1月初旬の時点で、英国向けの公式ウェブサイトでは、ミドルサイズSUVの「NX」のハイブリッド仕様について、「2023年分が完売したため、一時的に受注を停止しています」と書かれている。プラグインハイブリッド(PHEV)仕様は引き続き販売されている。

レクサスの重荷となっているのは、供給不足だけではない。
レクサスの重荷となっているのは、供給不足だけではない。

多くの自動車メーカーは、半導体を利益率の高い車種やブランドに優先的に配分しているが、NXは違う。レクサス欧州部門のパスカル・ルッホ副社長は、「NXは車種独自の部品が多いため、柔軟性が限られている」とAUTOCARに語っている。

NXは「今年の成長目標の中心」であったため、生産の逼迫が大きく響いたとハリソンCEOは振り返る。

しかし、欧州におけるレクサスの課題は供給不足にとどまらない。法人向けの社用車販売に苦戦しており、今年の総販売台数に占める割合はメルセデス・ベンツの約50%に対し、35%にとどまる。これは昔からの宿題だ。ルッホ氏は、「長年にわたるパワートレインの主役は、ディーゼルでした」と話す。

EV(電気自動車)の導入の遅れも響いている。EVは、税制上の優遇措置により、ディーゼルに代わるパワートレインとして急速に選ばれるようになった。コンパクトSUVの「UX」のEV仕様は、1回の充電での航続距離が約320kmと短く、10月末までに英国でわずか300台しか販売されていない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    平成4年生まれ愛知在住。幼少期から乗り物好き。住宅営業や記事編集者といった職を経て、フリーランスとして自動車メディアで記事を書くことに。「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。

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