なぜレクサスは欧州で覇権を握れないのか 半導体だけではない「苦戦」の理由
公開 : 2023.01.04 21:45 更新 : 2023.01.05 01:12
電動モデルにテコ入れ EV導入も加速
レクサスの市場シェアが低いことについて、BMWやメルセデス・ベンツと比べるとまだ「若い」ブランドだからだとルッホ氏は擁護するが、テスラが10年未満で成し遂げたことを考えると、この弁もいささか空虚に感じられる。ボルボから独立したばかりのポールスターはさらに若いが、いまやレクサスのかかとに食らいついている。しかし、レクサスはここ数年で最もフレッシュなラインナップを揃えているというルッホ氏の主張には、説得力がある。
例えば、NXには初めてPHEVが設定され、英国では従来のハイブリッド車販売を上回った(ハイブリッド車の受注停止もあるが)。
一方、UXのEV仕様においても、駆動用バッテリーを54kWhから73kWhに大型化し、航続距離を約450kmに伸ばした改良型が2023年に発売される予定だ。
フラッグシップSUVであるRXは、最高出力370psの高性能PHEV(RX 500h)が満を持して投入される。
さらに、電動SUVの「RZ」も年内に登場。EV専用のE-TNGAプラットフォームを採用したレクサス初のモデルで、トヨタbZ4Xの兄弟車となる。
他にも多くの新型車が控えている。2021年12月に発表されたトヨタの新型EV(全15車種)の中には、レクサスの7車種が含まれており、2030年までに欧州向けに「フルEVラインナップ」を実現する野心的な未来を覗かせてくれた。スポーティなセダンやステーションワゴンのほか、電動スーパーカー「エレクトリファイド・スポーツ」の発売にも期待が寄せられる。
また、UXの下に位置するコンパクト・クロスオーバーとして「CT」を復活させる可能性もある。成長を続ける欧州のクロスオーバーセグメントに向けた、強力な一手となるだろう。
「走り」に焦点当てた車両開発
レクサスは、スポーティな走りに改めて焦点を当てることで、やや曖昧なブランドイメージを鮮明にしたいと考えている。「電動化を活用して、ドライビング・エクスペリエンスを刷新したい」とルッホ氏は語る。中でも、2つの革新的な技術が目を引く。ステアバイワイヤの「ワンモーショングリップ」、そしてトルクを各車輪に振り分けてグリップとコントロールを向上させるトルクベクタリング「DIRECT4」だ。後者は、EVやハイブリッド車に搭載された電気モーターを利用するもので、「レクサスのドライビング・シグネチャー」を実現する鍵となるという。
ステアバイワイヤは今に始まったものではないが、RZのオプションとして、ステアリングコラムを廃止し、代わりにECUと電気系統をバックアップとして使用することができる。ステアリングギアレシオを変化させることで、ヨーク型ステアリングホイールの装着を可能にしている。
トヨタが欧州でレクサスにこだわるのは、欧州の消費者にとってありがたい話である。2021年の世界販売台数は76万12台で、内訳としては米国(33万2000台)と中国(22万7000台)が圧倒的に多い。英国を含む欧州は、わずか4万7604台だった。レクサスにとって、欧州の重要性は低い。
欧州以外の地域では、RXのような大型車が販売の中心だ。レクサスにとって欧州最大の市場であるロシア(上記のACEAの数字には含まれていない)は、高級モデルの比率が高いことから収益性が最も高い。しかし、昨年2月のウクライナ侵攻を受けて、トヨタとレクサスはロシアから撤退している。
今のところ、レクサスが欧州でビッグウェーブを起こすことはなかった。しかし、電動化と古き良き時代の走りの追求が、レクサスを消費者のお買い物リストに載せるために必要な調整なのかもしれない。