1954年のクラス優勝マシンを再現 ブリストル450ル・マン 異彩のツインフィン 前編

公開 : 2023.01.21 07:05

300枚に及ぶ写真から3Dデータ化

450ル・マンの姿を忠実に再現することへ、2人は拘った。ブリストル400から405まで、量産ボディの成形型は2020年に同社が倒産した時点で救出されていた。だが、450の成形型は行方不明のまま。設計図をもとに、復元するしかなかった。

「ミッチェルが図面を発見。画像などから3次元データを構築してくれる企業を頼りました。その3次元データをもとに、造形する土台を作っています」。エンジンルームやインテリアなど、300枚に及ぶ写真が提供された。

ブリストル450ル・マン(1954年仕様)
ブリストル450ル・マン(1954年仕様)

飛行機の翼の骨組みのように、合板でボディの断面を構成。それを滑らかに結ぶことで、アルミニウム製ボディパネルの輪郭を導いている。「ミッチェルが営むコーチビルダーには、ラディックさんという腕利きの職人がいます」

細いスチール製ワイヤーの骨組みに、ボディパネルが組み合わされている。「彼は細部へ注意を払いながら、素晴らしい仕事をこなしました。ワンピースのボディは、単体で持ち上げられる強度もあります。完成に2年を要しましたが」

1954年のル・マン・マシンを復元するには、美しいフォルムへ塗装も必要だった。ボレが続ける。「1953年にブリストル・カーズはブリティッシュ・レーシンググリーンでボディを塗りました」

「ところが、一部のジャーナリストがジャガーと混同していたんです。色が似ていたためですね。そこで1954年はグラス・グリーンという明るい色を選んでいます。でも、当時のペイントサンプルは残っていませんでした」

ステアリングは当時のドライバーが保管

「正確に塗装色を確認するため、発見できたカラー写真を集めてフィルムメーカーのコダックへ色の再現を依頼しています。僅かに光沢を抑えることで、レーシングカーっぽさを出しました」

ブレーキは、アルフィン・ドラムではなくディスクブレーキを装備する。アルミホイールは、リムとディスク部分が別体。これは、専門家によって丁寧に再現された。

ブリストル450ル・マンのボディを再現する様子
ブリストル450ル・マンのボディを再現する様子

作業が進むなかで、ボレはブリストル・カーズがモータースポーツで獲得した記念アイテムも見つけ出した。1945年のル・マンのトロフィーや、記念のマグカップなど。

「レーシングドライバーのジャック・フェアマンさんが握ったステアリングホイールは、本人が保存していました。ミッチェルの人脈が、大きく役立ちましたね」

「当初、彼は売る気はないと話していました。しかし、450ル・マンの再現に賛同し、タコメーターと一緒に譲ってくれました。33番のゼッケンを付けた理由でもあります。フェアマンさんとトミー・ウィズダムさんのペアが、ドライブした番号です」

「彼が着用したハーバート・ジョンソン社のライトブルーのヘルメットと、グローブ、メガネ、ツナギなども入手できたんですよ。それ以外のコクピットは、貴重なインテリアの写真から専門家の助言を得て再現しています」

「メーター類をブラックに塗ったアルミパネルの上に並べ、カウルで覆いました。スイッチには、当時のように手書きでラベリングしています」

薄いカーペットが敷かれていたものの、車内は基本的にむき出し状態。ドアは硬い内張りで仕立てられている。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

1954年のクラス優勝マシンを再現 ブリストル450ル・マン 異彩のツインフィンの前後関係

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