これ以上が思い浮かばない BMWアルピナ D4 S グランクーペへ試乗 1つの集大成

公開 : 2023.01.13 08:25

高く評価したい優れた燃費 豊かな充足感

3.0L直6ディーゼルターボは、感動的に滑らかで静かに回る。右足の僅かな角度変化で、豊かなトルクを引き出せる。サウンドも悪くない。4000rpm以上まで回る軽快さも備えている。

D4 S グランクーペの車重は1945kgある。それでも、現実世界での速さに不足は微塵もない。最高速度は270km/hに届き、0-100km/h加速を4.8秒でこなす。

BMWアルピナ D4 S グランクーペ(欧州仕様)
BMWアルピナ D4 S グランクーペ(欧州仕様)

筆者がこのパワートレインで最も高く評価したいと思うのが、優れた燃費。英国の高速道路、110km/h+程度でのクルージングでは、18.8km/Lという数字が示されていた。59Lのタンクを満タンにすれば、無給油で1000km以上走れる。

ドイツ・アウトバーンの流れの良い区間では、200km/h前後で走ることも珍しくないが、そんな環境でも12.4km/Lは得られる。航続距離は600km以上と考えていい。

一般的に、同程度の動力性能を持つ高性能サルーンの場合、この速度域では7.0km/L前後に燃費が落ち込む。BEVの場合、大容量の駆動用バッテリーを搭載していても、150kmも充電量はもたないだろう。

アルピナ独自の手ほどきによって、乗り心地や操縦性は理想的。快適で安定している。単にしなやかなだけでなく、意欲的な走りでもバランスは失わない。ドライバーへ、豊かな充足感を提供してくれる。

路面の起伏が大きい郊外の区間では、車重の大きさを実感する。それでもステアリングホイールへ伝わるフィードバックや鋭い回頭性、見事に調和した操縦性は、アルピナならでは。専用ホイールやアンチロールバー、タイヤなども相乗している。

最大の魅力はドライバーへの訴求力

触覚的な豊かさや惹き込まれるコーナリングマナーがもたらす、ドライバーへの訴求力こそ、このブランド最大の魅力。D4 S グランクーペでの体験は、どんなBMWのMスポーツを持ってきても敵わないといっていい。

今後数年の内に、欧州市場の高性能モデルはBEVへ置き換わっていくことになる。しかし、内燃エンジンを存続させたいと考える理由として、D4 S グランクーペは最後の象徴になり得る。

BMWアルピナ D4 S グランクーペ(欧州仕様)
BMWアルピナ D4 S グランクーペ(欧州仕様)

2030年に、アルピナがどんなビジネスを展開しているのか、われわれは想像するしかない。しかし、D4 S グランクーペは可能な限り長く生き抜いて欲しいと強く願う。

BMWアルピナ D4 S グランクーペ(欧州仕様)のスペック

英国価格:8万1910ポンド(約1310万円/試乗車)
全長:4792mm
全幅:1850mm
全高:1440mm
最高速度:270km/h
0-100km/h加速:4.8秒
燃費:14.5km/L
CO2排出量:182g/km
車両重量:1945kg
パワートレイン:直列6気筒2993ccツイン・ターボチャージャー+ISG
使用燃料:軽油
最高出力:355ps/4000-4200rpm
最大トルク:74.2kg-m/1750-2750rpm
ギアボックス:8速オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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