オフローダーの民主化 ジープ・チェロキー ランドローバー・レンジローバー 英米の革新者 前編

公開 : 2023.01.28 07:05

モノコック構造で得られる利点へ注目

狭い駐車場や手強いオフロードでも、コマンドポジションは有効。少し頭を持ち上げるだけで、フロントタイヤが進む場所を正確に把握できる。チェロキーの場合は、身を乗り出さなければ難しい。

セパレートフレーム構造を採用したことで、クラシック・レンジのリジッドアクスルは広範囲に動く。チェロキーはホイールトラベル量に制限があり、ホイールベース間のブレークオーバー・アングルが浅めで、走破性の高さでは及ばない。

ランドローバー・レンジローバー 3.9SE(1970〜1996年/英国仕様)
ランドローバーレンジローバー 3.9SE(1970〜1996年/英国仕様)

もちろん、悪路性能は担保されている。深いぬかるみに対応するサスペンションを備え、前後ともリジッドアクスルで駆動される。路面の起伏を超える度にボディが揺れ、ワダチではタイヤが暴れるように感じるものの、当時の基準としては控えめだ。

タイヤサイズは近く、トラクションで大きな違いはない。リミテッド仕様のチェロキーの場合は、センターデフ付きの四輪駆動システムを備え、ローレンジも選択が可能。余程シリアスな場所でない限り、クラシック・レンジへ追従できるだろう。

モノコック構造を採用することで、多少の犠牲が生まれることをジープは理解していた。むしろ、セパレートフレーム構造では得られない利点へ注目していた。市場調査で、高級オフローダーが本格的な悪路へ挑む場面は限定的だと判明していた。

スポーティという表現を用いたくなる走り

滑りやすい草原や凍結した舗装路、ぬかるんだ丘陵地帯が、四輪駆動の主な活躍場所といえた。チェロキーは、これらの条件を難なくクリアしながら、殆どの時間を過ごすオンロードでの妥協を可能な限り小さくしている。

それ以上に、チェロキーは世界最速の量産オフローダーという称号を1993年に得ている。今回ご登場願った4.0L直列6気筒エンジンの場合、最高出力は192psに達し、1519kgという軽さが手伝い、0-97km/h加速を9.8秒でこなした。

ダークグリーンのランドローバー・レンジローバー 3.9SEと、ブラックのジープ・チェロキー 4.0リミテッド
ダークグリーンのランドローバー・レンジローバー 3.9SEと、ブラックのジープ・チェロキー 4.0リミテッド

ステアリングホイールを握り、アクセルペダルを傾けてみると、その反応は想像以上に軽快。チェロキーは乗用車ライクだ。

スポーティという表現すら用いたくなる。コンパクトなボディサイズと良好な視認性で、英国郊外の細い道でも導きやすい。後輪駆動モードへ切り替えれば、燃費も伸ばすことが可能だった。

高速道路を走れば、姿勢制御が緩めのステーションワゴンのようにも感じてくる。それでいて、思い切り泥まみれになることもいとわない。

対するクラシック・レンジのV型8気筒は3.5Lから3.9Lへ拡大され、187psへパワーアップしていたが、1988kgの車重に対しては不足気味。4速ATの仕事ぶりもイマイチだ。

とはいえ、高回転域でのV8らしいサウンドは重厚で聴き応えがある。高速道路の巡航でも、32.4kg-mと太いトルクで粘りリラックスしていられる。充分な加速時間が必要だけれど。

この続きは後編にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    チャーリー・カルダーウッド

    Charlie Calderwood

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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