ポルシェはいかにしてCO2排出量ゼロを目指すのか カーボンニュートラルへの取り組みとは

公開 : 2023.01.16 06:05

ポルシェは、2030年までにサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを目指しています。4車種の新型EV投入のほか、生産拠点における環境保護の取り組みなどを紹介します。

ポルシェの環境保護への取り組み

ポルシェは全ラインナップの電動化に向けて抜本的な改革を進めており、2024年からマカン、カイエンボクスター、ケイマンの4つの新型EVを投入する。これらのEVはガソリン車とともに販売される予定だ。

ポルシェの目標は、2025年までに販売台数の50%を電動パワートレイン搭載車とし、2030年までに80%をEVにすること。しかし、EVの生産が環境に負荷を与えては元も子もない。そこでポルシェは現在、2030年までにサプライチェーン全体をカーボンニュートラルにするという別の目標を掲げている。

ポルシェはEVだけでなく、生産工程からもカーボンニュートラルを目指している。
ポルシェはEVだけでなく、生産工程からもカーボンニュートラルを目指している。

ここでは、ポルシェがどのように実質排出量ゼロを目指しているのかを紹介する。

新しいエネルギーの利用

ポルシェのエネルギー戦略は、持続可能なエネルギー源のみを利用することと、使用量を削減することの2つを柱としている。前者はシュトゥットガルト工場での自然エネルギーへの転換を勧め、これにより年間9万500トンのCO2排出量が削減されたという。

バイオガスの利用は、それほど大きな変化をもたらさなかったが、さらに4万2300トンのCO2を削減している。工場内では、部品を運ぶ自律走行車に回生ブレーキを追加し、効率を高めている。

昔ながらのアプローチ

ポルシェのライプツィヒ工場では、敷地の半分近くを緑が占めている。
ポルシェのライプツィヒ工場では、敷地の半分近くを緑が占めている。

ポルシェの環境保護への取り組みは、近年のトレンドに対応したものではなく、2000年代に入ってから動き始めたものだ。1999年、カイエンを生産する新工場の建設地としてライプツィヒ近郊の旧軍事試験場が選ばれたが、建設には3年の猶予が与えられた。この施設はドイツ帝国時代から1世紀近く使われていたもので、着工するにはまず軍需品の撤去が必要だった。

ポルシェの環境・エネルギー管理部門の責任者であるアンケ・ヘラーは、「この時、環境保護への “昔ながら” の取り組みが始まった」と説明する。300ヘクタールの施設のうち130ヘクタールを「生態系補償地域」に指定し、工場が環境に与える影響を相殺するという、当時としては斬新なコンセプトが採用されたのだ。

現在、このエリアにはエクスムーア・ポニー、オークロックス(ヘック牛)、50のミツバチのコロニーがあり、138種の鳥類が集まっている。

また、次世代の教育にも活用されている。7歳以上の子ども向けに、工場敷地内を巡るサファリツアーを提供しているのだ。元ザクセン州環境農業大臣のトーマス・シュミットは、「幼い頃から責任を持って、持続可能な方法で自然や環境と関わる方法を子供たちに教えることが重要」と述べている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    AUTOCAR UK

    Autocar UK

    世界最古の自動車雑誌「Autocar」(1895年創刊)の英国版。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事