マニア心をくすぐるスプリント トライアンフ・ドロマイト 英国版クラシック・ガイド 後編

公開 : 2023.02.04 07:06

旧車として乗りやすい選択肢だと英編集部が推すドロマイト。日本への正規輸入はありませんでしたが、その魅力をご紹介します。

活発なスプリント用16バルブ・ユニット

世界で最も快適なサルーンの1台として、高く評価されたトライアンフ・ドロマイト。パワフルなスプリント仕様では、胸のすくような加速と不足ない車内空間を備え、サルーンとして今でも充分に活躍できる。ドライビングポジションも理想的といえる。

動力性能は、ドロマイト 1300で0-97km/h加速が約20秒を必要とするが、スプリントでは9.0秒を切る。グレードによって速さの開きは大きいものの、エンジンは回転数を問わず滑らかに吹け上がる。

トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)
トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)

特にスプリントの2.0L 16バルブ・ユニットは活発だ。ただし、ラジエタークーラントの交換を怠ると、アルミニウム製ヘッドの腐食やオーバーヒートに繋がる。ヘッドガスケットも傷めてしまうので、定期的なメンテナンスは欠かせない。

ベーシックなスチールヘッドの1300や1500の4気筒ユニットでも、オーバーヒートの痕跡やウオーターポンプの調子、ガスケットの状態がチェックポイント。管理が行き届いていれば、鋳鉄製のエンジンは基本的に堅牢といえる。

パワー不足や吹けの悪さは、キャブレターのラバーマウントの劣化が原因かもしれない。弱点の1つがクランクエンド・フロートと呼ばれる部分。エンジンを始動し、クラッチペダルを誰かに踏んでもらい、フロント側のプーリーに遊びがないか確かめたい。

致命傷となるボディやシャシーのサビ

ドロマイトが現役の頃、ガソリンは有鉛が一般的だった。対策を取らないまま現代の無鉛ガソリンで高回転域まで回すと、ヘッドのバルブシートが駄目になってしまう。添加剤を用いるのも良いが、バルブシートのアップデートを済ませた方が安心だろう。

デフの摩耗具合や、MTの場合は変速時にギアの回転数を調整するシンクロメッシュの状態を予め確かめておきたい。英国では、専門ガレージへエンジンやトランスミッションのオーバーホールを依頼できる。

トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)
トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)

ブレーキは、公道で乗るぶんには現在の交通環境にも充分耐えられる。サーキットでの走行会に挑むなら、制動力は足りないだろう。スプリントのブレーキパッドは、1850より高性能なアイテムが用いられていた。

年代物のクルマらしく、ドロマイトの致命傷となるのがボディやシャシーのサビ。最も深刻な部分といえるのがフロントガラスの付け根、Aピラーとバルクヘット、インナーフェンダーなどが交差する付近だというが、全般的に錆びやすい。

ハンサムなミケロッティ・デザインのボディに、先進的な技術が組み合わされたトライアンフ・ドロマイト。アルミホイールを履くスプリントは特に、カーマニアの心をくすぐるクラシックサルーンといえるだろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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