発表迫るマイチェン版 ポルシェ・カイエン S 試作車へ試乗 4.0L V8ツインターボ獲得 後編

公開 : 2023.01.20 08:26

最も魅力的で一体感のあるドライビング体験

説明が長くなってしまったが、肝心の走りもしっかりアップデートされている。特に筆者が試乗したカイエン Sのプロトタイプでの違いは明らか。アウディ由来のV6ツインターボからV8ツインターボへ置き換えられた効果と魅力を、つぶさに体験できた。

動力性能が高められ、ダッシュ力は一層鮮鋭。0-100km/h加速を約5.0秒でこなし、最高速度は270km/hに届くという主張は大げさではない。従来より意欲的にボディを押し進める。

ポルシェ・カイエン S プロトタイプ
ポルシェ・カイエン S プロトタイプ

V8ツインターボは低回転域でのトルクも太い。標準装備される8速オートマティックもギア比に改良を受けており、高速道路での滑らかで穏やかな走り味を実現している。

回転フィールはスムーズ。日常的な運転環境でも、洗練度を高めた印象を受けるはず。パワフルでハイレベルな仕上がりは、カイエン・ターボを追加予算で選ぶ必要性を感じさせない。

当然だが、直線が速いだけではない。従来のカイエンは、このクラスのSUVで最も魅力的で一体感のあるドライビング体験を提供するモデルといえたが、その実力が磨かれたようだ。

電動機械式のパワーステアリングは驚くほど正確で、後輪操舵システムがさらなる敏捷性を実現している。四輪駆動システムも、常に突出したトラクションを維持し続ける。

軽量なモデルではないことは間違いない。それでも、タイヤが路面を確実に掴みながら、鋭敏にコーナリングしていける能力には唸らざるを得ない。ワインディングロードで、思わず夢中になってしまいそうだ。

クラス頂点の座を譲ることはない

サスペンションの改良によって得るであろう乗り心地の変化は、正直まだわからなかった。直接マイナーチェンジ前のカイエンと比べる必要がありそうだ。

ポルシェの技術者は、トリプルチャンバーからツインチャンバーへエアサスペンションを変更することで、姿勢制御と快適性は確実に向上したと強調していた。タイヤサイズの変更も組み合わせることで、路面からの衝撃をより吸収できるという。

ポルシェ・カイエン S プロトタイプ
ポルシェ・カイエン S プロトタイプ

ツインチャンバーのエアサスペンションと聞くと、2代目カイエンからの流用では、と勘ぐるかもしれない。だが共有部品はほぼ存在しない、新開発のアイテムらしい。

3代目カイエンとして、操縦特性には大きな変化が与えられていない。それでも、このクラスでのリードを保持できる能力は備わっている。不足していると感じた要素は、なかったといって良いだろう。

ライバルと比べて多少見劣りしていたインテリアも、マイナーチェンジでしっかり対応済み。正式発表が待ち遠しい。

2002年の初代以来、ポルシェ・カイエンは常にクラスの頂点に君臨するモデルといえた。まだプロトタイプの状態ではあったが、3代目の後期型も、その座を譲ることはなさそうだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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