【現実の環境でテスト】ランドローバー・ディスカバリー・スポーツPHEV仕様に試乗 EVよりも便利なのか?

公開 : 2023.01.19 12:05

充電と給油の手間 PHEVの真価は?

しかし、今回の試乗でPHEVの真価は、と聞かれるとやや微妙な結果であると思う。

そもそも、PHEVはなぜ存在するのか、という話になってしまうのだが、わたしのようにすでにEVを当たり前に毎日乗っている身からすると、わざわざガソリンスタンドに寄って給油をしさらに充電器で5時間(3kWの充電器の場合)も充電をおこなった結果としての燃費の改善は、無いわけではないが目を見張るほどでは無かったのである。

ガソリン仕様よりも燃費は良いが、充電と給油の双方の手間考えるとPHEVの存在意義に疑問は残る。
ガソリン仕様よりも燃費は良いが、充電と給油の双方の手間考えるとPHEVの存在意義に疑問は残る。    戎大介

実際の数値でみると、今回の総走行距離は434kmであり、この間にゼロから満充電までポルシェの8kWで2回充電をおこない、さらにもう1回は68%までで止めた。

したがって合計約2回半の充電でおよそ40.7kWの充電をおこなったことになる。

そして、試乗の最後にレギュラーガソリンを34.57L給油したので、いわゆる燃費は12.55km/Lという数値となった。

これを費用で換算すれば、40.7kW×20円(1kWh当たり)=814円と、34.57L×161円=5566円となり、合計推定費用は6380円となる。

この距離をディーゼル仕様で走ると、イヴォークでのわたしの経験から平均的におよそ11.36km/Lの燃費が出るので、費用としては140円×434km÷11.36=5348円となってしまい、ディーゼルに軍配は上がる。

一方、ガソリン仕様の公式燃費は9.6km/Lであるから、計算するまでもなくPHEVの方がずっとマシだが。

また、仮に数年以内にデビューするはずのEV版が、ジャガーIペイス並みのバッテリーを搭載しているとすると、90kWhで航続距離が400kmを超えるはずなので、その際の費用は2000円足らずとなり圧倒的にコストは安い。しかも充電は1回で完了するはずである。

PHEVはEV普及の橋渡しになる?

結局、車両購入コストを考慮せず単純に燃費だけで比較すれば、EV<ディーゼル<PHEV<ガソリンの順になってしまう。この数値はPHEVにとってはあまり好ましくはない。

メーカーのカタログ値の燃費は62.5km/Lというビックリするような数値になっている。

PHEV=過渡期の産物は、EV普及の橋渡しとなるのか。EVの普及にはインフラ整備を始め、まだまだ大きなハードルが沢山ある。
PHEV=過渡期の産物は、EV普及の橋渡しとなるのか。EVの普及にはインフラ整備を始め、まだまだ大きなハードルが沢山ある。    戎大介

充電を頻繁に繰り返せばこの数値は可能だと思うが、現実には何度も充電をするぐらいなら、BEVにしてしまった方がバッテリー容量が大きい分、回数も減って楽だし、果たしてこのクルマを購入する層のうち、何人が実際に充電をするかという疑問も付きまとう。

しかし、雪国の大雪による渋滞情報などを見るにつけ、EVで電気が空になったら大変だと思ってしまうのだが、そのような時にはPHEVのメリットが生かせる可能性がある。

無論、カーボンニュートラルという世の中の流れがあり、それに少しでも沿ったクルマを生み出す、というのはメーカーの使命であろうが、複雑な構造、そして生産の手間、ユーザーの利便性などを総合して考えればPHEVは過渡期の産物であるということに間違いは無い。

この欄で何度も書いているように、EVの普及にはインフラ整備を始め、まだまだ大きなハードルが沢山ある。

国として本気でEVを導入する気があるのなら、それらを素早く克服してゆかなくてはならないと思うのだが、はたしてPHEVがその橋渡しとなるかどうかは、まだ分からない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    笹本健次

    Kenji Sasamoto

    1949年生まれ。趣味の出版社ネコ・パブリッシングのファウンダー。2011年9月よりAUTOCAR JAPANの編集長を務める。出版業界での長期にわたる豊富な経験を持ち、得意とする分野も自動車のみならず鉄道、モーターサイクルなど多岐にわたる。フェラーリ、ポルシェのファナティックとしても有名。

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