サーキットで新旧を比較 ホンダ・シビック・タイプRへ英国試乗 最新版は過去最高か

公開 : 2023.01.25 08:25

熟成度を高めたホンダのホットハッチ、シビック・タイプR。英国編集部が高速サーキットで仕上がりを確かめました。

スラクストン・サーキットで新旧を比較

雨に濡れたスラクストン・サーキットは、真新しい高性能モデルを初試乗する場所として、最適とはいえないだろう。グレートブリテン島の南部に位置するこのコースは、高速コーナーが連続している。

4速の速度域で、奥に向けて徐々に曲がりがきつくなる場所がある。アウト側にガードレールが間近に迫るところや、草地に向けて突っ込むようなダウンヒルもある。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダシビック・タイプR(英国仕様)

アクセルペダルを緩めてスライドを楽しめそうな区間は、舗装が新しく滑りやすい。うっかり誘惑されると、厳しい仕打ちが待っていそうだ。160km/h以上の速度域で、グリップ力が失われる恐ろしさを想像して欲しい。

荷重移動でクルマを操っている時は特に、肝がキンキンに冷える。速度域が高く、トラクションの問題ではない。だがその一方で、先代のFK8型と最新のFL5型、2台のシビック・タイプRの違いをより鮮明に確認できる場所でもある。

期待のホットハッチは、目を疑うような価格を吊り下げて英国へ上陸した。実に、4万6995ポンド(約751万円)もする。かつては英国のスウィンドン工場で大量生産されていた時期もあったが、最新のFL5型は日本の埼玉県で作られ、海を越えて運ばれてくる。

330psを発揮する、オーバースクエア・シリンダーの2.0L 直列4気筒エンジンは、アメリカ・オハイオ州で組み立てられるという。様々な理由で価格は上昇し、販売台数は厳しく制限されてしまった。もちろん、CO2の排出規制も大きく影響している。

尋常ではない量の技術者の愛情や熱意

エンジン自体は、先代も搭載していたK20型の進化版。前輪駆動で、5ドアのハッチバックというスタイルは変わらない。プラットフォームも先代譲りだが、長さと幅を拡大するなど、大幅なアップデートを受けている。ボディも強固に組み立てられている。

今回の試乗車には、3265ポンド(約52万円)するカーボン・パッケージというオプションが載っていた。つまり、5万ポンド(約800万円)を超えていた。だとしても、シニカルに評価するつもりはない。やはり素晴らしい。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)

このクルマには尋常ではない量の、技術者の愛情や熱意が注がれている。フライホイール1枚とっても、先代より18%軽い。エンジンのレスポンスが良くなり、レブマッチ機能を活用しても、気分を上げるアルミ製ペダルを踏んでも、完璧に変速をこなせる。

タイヤのキャンバー方向の剛性、サスペンションがタイヤの縦方向の角度を維持する能力も、先代の初期型と比べて25%高い。2017年に登場した後期型とでは16%高い。一貫した操縦特性と、秀でた安定性を導いている。

ブレーキの冷却ダクトにも入念な調整を受けている。FL5型の車重は約50kg増えたが、フロントブレーキの温度は10%ほど低く保たれるという。

ステアリングコラムは、60%も剛性が高められた。タイヤの向きを変えるトラックロッドエンドも強化された。英国仕様のホイールサイズは20インチから19インチへ落とされたが、ワイドになり、強度が高められている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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