サーキットで新旧を比較 ホンダ・シビック・タイプRへ英国試乗 最新版は過去最高か

公開 : 2023.01.25 08:25

予想通り爽快で感触豊かで、敏捷な先代

パワートレインではターボが改良を受け、回転時の慣性を14%減少。エグゾーストの排気効率は13%向上した。それらが、10psの増強に繋がっている。

以前から非の打ち所がなかったトランスミッションも、変速時の遊びが削られた。2速から3速へスライドさせる場合などで、余計な動きが制限されつつ滑らかさを増し、より充足感のあるフィーリングを生んでいる。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダシビック・タイプR(英国仕様)

先代のシビック・タイプRは見た目が賑やかだったが、最新版はスタイリングも好ましい。ホンダ側も、小さくない自信を匂わせている。

滑りやすいコンディションのスラクストン・サーキットを、先代の320psを発揮するFK8型で攻め込む。予想通り爽快で、感触が豊かで、敏捷に走る。FL5型が登場するまでの7年間、このクラスを圧倒し、王者に君臨し続けたホットハッチだ。

世代交代したとしても、ドライビング体験で得られる興奮に不足はない。秀抜の運転姿勢に身を置き、高精度な操縦性を堪能する。エンジンがレッドラインへ迫るほど鋭敏さが強まり、サウンドも尖っていく。仕上がりは素晴らしい。

今回のような濡れた条件では、太いトルクの影響でタイヤが滑り、LSDがロックしてアンダーステアへ転じてしまう。アクセルペダルを丁寧に調整する必要があるが、限界領域を探るやり取りも楽しみの1つ。正確な操縦性が、それをバックアップする。

先代より角が丸められ、懐の深いFL5型

確かに、乗り心地は少々硬い。だがスタイリングをアップデートするだけで、フォルクスワーゲン・ゴルフGTIやルノーメガーヌR.S.といったライバルと、まだ充分に戦いを勝ち続けることができただろう。

最新のシビック・タイプRへ乗り換えると、先代の足回りが硬かったことへ改めて気がつく。左右のタイヤの間隔、トレッドが広げられグリップ力も増しているが、しなやかな足腰でタイヤはアスファルトを確実に掴み続ける。より高い、操る自信が生まれる。

ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)
ホンダ・シビック・タイプR(英国仕様)

短時間ながら、英国郊外の一般道も試乗させてもらったが、しなやかなサスペンションの恩恵を確認できた。先代では叶わたかった、落ち着いたマナーを実現させている。

サーキットの高速コーナーへ侵入すると、明らかに安定性が高く、完璧といえる気持ち良さで駆け抜けられる。タイトな最終コーナーでは、意欲的にフロントノーズが向きを変える。質量の動きが抑制され、従来以上の一体感を伴って操ることができる。

安定性を磨きつつ、動的な調整域が広い。同じ印象をドライ・コンディションでも感じられるかどうか、晴れた日の一般道ではどうなのか、興味が掻き立てられる。

先代より角が丸められ、懐の深いホットハッチになったことは間違いない。予想を超える伸びしろで。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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