シトロエン・アミ 詳細データテスト 思ったより楽しいハンドリング 想定より短い航続距離 うるさい

公開 : 2023.01.21 20:25  更新 : 2023.02.13 07:12

走り ★★★☆☆☆☆☆☆☆

まぁ、スムースなクルマだ。それはそれとして、ほかにどんなことが言えるだろうか。

このアミ、クリープ現象がなく、またギアが入っていれば傾斜で勝手に転がり出すことはない。スロットルレスポンスは、わかりやすくスムースだ。走り出すのに面倒なことはまったくない。

走りはミニカーなり。速度を上げると、バッテリー消費は大きく、しかし上限は45km/hほどにしか届かない。市街地のチョイ乗り程度に留めておくのが無難だ。
走りはミニカーなり。速度を上げると、バッテリー消費は大きく、しかし上限は45km/hほどにしか届かない。市街地のチョイ乗り程度に留めておくのが無難だ。    MAX EDLESTON

驚異的な加速性能を求めているなら、あてもなく求め続けることになる。0−32km/hは6秒をわずかに超える。最高速度の45km/hに達するには、およそ10秒かかる。たいていの上り坂なら、このスピードは維持できる。下り坂であれば、もう少し加速性能は向上し、最高速度も50km/h程度まで上がる。

45km/hでのクルージングは、パートスロットルがベスト。スロットルペダルを大きく踏み込むと、数秒のラグがあってから、下手くそなタクシードライバーのような急発進するようなところがある。それを避けるには、少し控えめにペダルを踏むことだ。

完璧に発進すると、回生しているような感覚はほとんど感じられない。それでも、モーターはタイヤと接続されたままで、そういう挙動を示すが、いかにも500kg以下のクルマらしく走る。

ブレーキペダルのフィールはじつによく、制動も非常に素早い。ABSはないので、調整はドライバーがしなくてはならないが、難しいことではない。たとえタイヤをロックしてしまっても、おそらくたいした問題にはならない。

むしろ、本当に語らなくてはならないことは航続距離だ。市街地のクルマで混み合った32〜48km/h制限道路をメインに走ると、控えめなトップスピードが支障になることは滅多になく、問題は起きないだろう。天気がよければ、ヒーターもワイパーもファンも使わずにすむので、65km近く走れるはずだ。

しかし、最高速に近い速度で走ることが長くなると、航続距離は短くなる。都市部よりも、郊外ではそういうケースが多いはずだ。最悪の場合、危機感を覚えるようになってくる。

たとえば、45km/hを用意にキープできるような道では、27kmという航続可能距離が表示されたこともある。10kmほど走ったら、警告灯が点いて残り10kmと表示され、残り5kmになると節約モードに入った。

そうなると、バッテリーが弱ったラジコンカーのように、動力性能は衰える。下り坂でも最高速に届くのに40秒以上かかるし、傾斜も10数°あると登れなくなる。結局、残り27kmと表示されてから16km走ったところで、アミは残り1.6kmと言い出した。

たしかに気温は10℃ほどで、霧雨が降っていた、理想的ではないコンディションだった。また、このクルマの挙動や性質に慣れつつあったが、それでもまだまだ十分になじんではいなかった。

市街地では、妨げるものがなくてもせいぜいこのクルマの最高速くらいまでしか出せない。その速度域では、アミのパフォーマンスでは満足するのは難しい。仮に、このクルマが60km/hや80km/hで走れたとしても、短時間でさえ乗りたいものではない。そういう移動が必要なときは、バスにでも乗りたい。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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