静かな走りで思考を新陳代謝 メルセデス・ベンツSクラス S 580e(5) 長期テスト
公開 : 2023.02.05 09:45
ドイツの名門ブランドが提供する、最上級PHEVの完成度は? ラグジュアリー・サルーンの実力を長期テストで確かめます。
もくじ
ー積算1万2588km 洗車が大変なロングボディ
ー積算1万2926km PHEVは充電してこそ
ー積算1万4197km 赤い文字での警告表示
ー幸運を祈ってSクラスでユーロトンネルへ
ーほぼ無音といえる走行中のSクラスの車内
ー思考の新陳代謝につながる静かな運転体験
ーテストデータ
積算1万2588km 洗車が大変なロングボディ
これまでにも触れているが、ロングボディのSクラスは大きい。運転中は余り気にならないものの、駐車時は手間取ることも多い。
見た目は、5.2mを超えた全長を忘れるほど均整が取れているが、洗車時はその大きさを全身で感じる。アルミホイールには14本もスポークがあり、これまた洗うのが大変。5スポークの方が筆者は好きだ。
積算1万2926km PHEVは充電してこそ
聞いた話では、英国のプラグイン・ハイブリッド(PHEV)・オーナーの一部には、駆動用バッテリーを充電器でまったく充電しない人がいるという。大きな荷物を載せて、小さなエンジンで走っているようなものなのだが。
特にSクラスのPHEVは能力に優れる。これまでに1万2000km以上を走行している長期テスト車両の場合、その半分以上は電気の力だけでまかなわれた。筆者の自宅に設置している家庭用充電器も、大活躍している。
積算1万4197km 赤い文字での警告表示
筆者の自宅から、フランス・ル・マンに位置するサルテ・サーキットのパドック入り口までは、丁度800kmある。過去に何度も往復しているが、先日も早朝に出発し、翌日に仕事を終わらせて帰宅するという、1600kmの出張を1人でこなした。40時間かけて。
普通に頼まれたら、余り喜ぶような行程ではないかもしれない。しかし、間違いなくPHEVのメルセデス・ベンツSクラスが得意とする移動といえた。
ただし、若干の不安があった。出発の数日前に、ダッシュボードのタッチモニターへ不具合の警告が表示されたのだ。緊急性の高そうな赤い文字で、「クルマを止めてください」と点滅していた。
幸運を祈ってSクラスでユーロトンネルへ
システムを詳しく調べてみると、補機用の12Vバッテリーに問題がある様子。駆動用バッテリーではなく安心した。
既に辺りは薄暗い。もしロードサービスを頼んだら、その日の夕方の予定はすべて狂ってしまうと考えた。取り引き先との大切なミーティングがあった。
何かの誤作動だと信じた筆者は、クルマを再始動させ、とりあえず目的地へ向かうことにした。ミーティングには少し遅れてしまったが、Sクラスを再始動すると表示は消え、無事に自宅まで戻ることもできた。
ところが翌日、再びその警告が映し出された。ル・マンへの出張は、飛行機でパリに降り立ちレンタカーを使うか、幸運を祈ってSクラスを走らせるか、選択を迫られた。読者ならどちらを選ぶだろう。
筆者は、飛行機が好きではない。結局、ユーロトンネルをSクラスで目指した。他方、現地で一緒に仕事をする予定のフォトグラファー、リュック・レイシーは飛行機を選択したが、フライトが遅れて約束を4時間も過ぎて到着した。
Sクラスは、自然に直った様子。それ以来、今まで一度も表示されていない。
タッチモニターへ警告が表示された時、筆者が行った対処法は、エンジンを切り、クルマから降りてカギをかけて、5分間待っただけ。再び乗り込んだときには、通常の状態に戻っていた。一般的な対処法といえるだろう。