静かな走りで思考を新陳代謝 メルセデス・ベンツSクラス S 580e(5) 長期テスト
公開 : 2023.02.05 09:45
ほぼ無音といえる走行中のSクラスの車内
この道中の体験をレポートできれば良いのだが、実はほ殆ど記憶がない。景色の美しいルートを辿るような、時間の余裕もなかった。気持ちを鎮めて淡々と目的地を目指し、仕事を終わらせ、自宅への帰路についた。
このような走り方は、メルセデス・ベンツの技術者がSクラスに想定している主なものだろう。混雑した環状線は、本来余り得意とする道ではない。高速道路をオートクルーズで淡々と急ぐスタイルが、1番のオハコだ。
筆者は、隣国を目指すような長距離移動では、魔法のじゅうたんのように宙に浮いた乗り心地を望まない。可能な限り快適な方が好ましいが、シートとサスペンションの調和が取れつつ、路面との接地感も伝わった方がいい。Sクラスは、それを叶えている。
車内は、無音に近いほど静かであって欲しい。移動中は音楽を聞いていることも多いが、それはエンジンのサウンドや風切り音、ロードノイズよりも好きだから。
ベントレー・フライングスパーやロールス・ロイス・ゴースト、ランドローバー・レンジローバーなど、極めてノイズの小さいクルマの場合、インフォテインメント・システムは切ったままのことが多い。無音のまま運転している。Sクラスも、そんな車内だ。
思考の新陳代謝につながる静かな運転体験
ル・マンまでの片道800kmの移動は至極快適だった。静かな環境で、静かな気持ちで移動することは、筆者の場合は思考の新陳代謝につながる。考えを整え、まとめることができる。
自宅へ戻った時の自分は、出発前より幸せだった。頭が冴え、創造的になっていたと思う。疲れも殆どなかった。むしろリフレッシュできていた。
これこそまさに、Sクラスが地球上に存在する大きな価値の1つといえる。もちろん、同クラスの競合モデルもこれに近い体験を与えてくれる。だが、メルセデス・ベンツの実行力は間違いがない。
テストデータ
気に入っているトコロ
リラックスできる車内:完璧にチューニングされた乗り心地は、ドライバーに思考的・精神的なリラックスを与える。いわゆる、瞑想の体験にも近いかもしれない。
気に入らないトコロ
警告表示の誤報:異常が誤って表示されるケースは、Sクラスに限ったことではない。システムの複雑さを物語っているともいえる。
テスト車について
モデル名:メルセデス・ベンツSクラス S 580e L AMGライン・プレミアム・プラス・エグゼクティブ(英国仕様)
新車価格:11万3880ポンド(約1913万円)
テスト車の価格:11万3880ポンド(約1913万円)
テストの記録
燃費:18.1km/L
故障:なし
出費:なし