待望のMのワゴン BMW M3 コンペティション・ツーリング 500Lの荷室に510ps 後編

公開 : 2023.01.26 08:26

本物のMモデルのステーションワゴンが登場。創業50周年を記念した特別な仕上がりを、英国編集部が確かめました。

サスのチューニングでサルーンに並ぶ操縦特性

BMW Mの50周年という節目に発売された、BMW M3 コンペティション・ツーリング。ボディ後方へ広がる大空間に、強力な直列6気筒ターボエンジン、深いバケットシートが組み合わされている。特定のドライバーにとっては、運命の相手かもしれない。

車重は1865kgと、サルーンのM3より85kg重い。これには、拡大されたボディ後半部分の板金だけでなく、ボディ剛性を維持するための補強材も含まれている。

BMW M3 コンペティション・ツーリング(英国仕様)
BMW M3 コンペティション・ツーリング(英国仕様)

シャシー周りを確認すると、リアのスプリングレートとダンパーの減衰力はM3 ツーリングの方が高い。サルーンに並ぶ操縦特性を与えることが目指されている。

グリップやトラクションが限界を迎えると、若干シャープに挙動が変化するものの、それ以外は狙いを実現したといって良さそうだ。直接乗り比べれば、若干ダルに感じられるかもしれないが、そうしなければ気付かない違いでしかない。

郊外の道やアウトバーンを短時間で走り切るという、M3らしい能力は高次元なまま。極めて正確な操縦性を得ている。最高速度は、Mドライバーズ・パッケージで280km/hに設定された。

スタビリティ・コントロールにはMダイナミック・モードが用意され、条件が許せば、アウディRS4 アバントとは異なるスタイルでシャシーを振り回すことが可能。電子アシストをオフにしても、挙動は漸進的で予想しやすい。

最高出力510ps、最大トルク66.1kg-m

試乗日は氷点下に迫る寒さで、サマータイヤを履いていたため、後輪駆動モードは試さなかった。しかし、これまでの体験から、滑沢なエンターテイメント性も備えているはず。

ブレーキペダルは、不自然にタッチが柔らかかった。効きの洗練性もM3 サルーンには及んでいない様子。数少ない、小さな弱点といえる。

BMW M3 コンペティション・ツーリング(英国仕様)
BMW M3 コンペティション・ツーリング(英国仕様)

動力性能は、これ以上が必要ないと思える水準。0-100km/h加速に要する時間は3.6秒で、997型のポルシェ911 GT2 RSに並ぶダッシュ力が与えられている。Dセグメントのステーションワゴンでありながら、シリアスなスポーツモデルに太刀打ちできる。

S58型の3.0L直列6気筒ツインターボの最高出力は510ps。最大トルクは66.1kg-mで、既存のM3 コンペティションと同値だ。

エンジンサウンドは、特に低回転域で、どちらかといえば控えめ。スポーティなモードを選ぶと、ザラついた合成音が強調されるが、かつてのS54ユニットのような音響は楽しめない。中間加速は、そこまで獰猛ではないようだった。

乗り心地は明らかに硬い。それでも、低速域での鋭い揺れさえ我慢すれば、動力性能を考えると許容範囲。M3 サルーンと大きな違いはない。

高速道路でのマナーは感心するほど磨かれており、有能なダンパーが路面からの入力を逐一丸めてくれる。コンフォート・モードを選べば、スプリングがしっかり仕事をするようになる。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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