アウディeトロン×スタッドレスタイヤ 高レベルの実力、スポイルされないのか 試乗

公開 : 2023.01.30 17:45

アウディeトロンに、純正採用のスタッドレスタイヤ「ダンロップ WINTER MAXX SJ8」を装着したモデルに試乗します。

アウディeトロンの実力

純正採用のスタッドレスタイヤ「ダンロップ WINTER MAXX SJ8」を装着したアウディeトロン・スポーツバックで、ショートトリップを試みた。

本来ならば降雪地域へ赴きインプレッションを取る予定だったが、折しも試乗日は上越地方が記録的な大雪に見舞われた直後だったため、残念ながらドライ路面での試乗となった。

アウディeトロン55クワトロ
アウディeトロン55クワトロ

確かめたかったのは、モーター制御となったクワトロ(AWD)の、雪上における走破能力。そしてこれがもたらす、コンフォートライドの実力だった。

ちなみに筆者はこのeトロンがデビューを控えた2018年に、ナミビアの大地でプロトタイプの走りを堪能した経験がある。

アウディがeトロンのローンチにアフリカの大地を選んだ理由はピュアEVの先進性と環境性能の高さをPRする上で、この地が極めて強いコントラストを放つと考えたからだろう。

ともあれ筆者はその広大な赤土の大地でeトロンを走らせ、このまますぐにでも発売できそうな、完成度の高さに唸らされた。

フロアに一番の重量物であるバッテリー(700kg)を敷き詰めたことで得られる、車体剛性の高さと重心の低さ。フロントにエンジンを搭載しないことで得られる、鼻先の軽さと前後重量配分の良さ。

こうしたEVならではの体幹バランスが走りの質感を高めることは、今でこそ多くの人々に知られるところだ。

しかしアウディはこれを4年以上も前にいち早くミドルサイズのSUVへと落とし込み、400km以上の航続距離と、トレンドを先取りしていた。

ガソリン時代の性能を継承

その車体は2.5tを超えるヘビー級だが、eトロンはSUVならではのストロークフルな足周りでこれを支えた。

大容量のエアサスが極めて快適な乗り心地を維持し、可変ダンパーがしなやかにそのロールとピッチングを制御した。

アウディeトロン55クワトロのポテンシャルの高さは、運転しやすさに直結する。レスポンスや駆動制御が例だ。
アウディeトロン55クワトロのポテンシャルの高さは、運転しやすさに直結する。レスポンスや駆動制御が例だ。

極めつけは、モーター制御となったクワトロだ。ドライブセレクトを「ダイナミック」に転じれば、エレクトリックブースト機能で通常350psのモーターパワーが408psまで高められ(これは市販モデルも同じ)、それまで安定志向だった4輪の制御を後輪よりのトルク配分に変更して、コーナーを積極的に曲げて行く。絶妙なアングルを保ちながら、前へと進んで行く。

ドライブシャフトもセンターデフも持たないクワトロはしかし、確かに自分がよく知るガソリン時代の性能を受け継いでいた。

いやヨーレート検知の速さや、アクセルレスポンス的にはそれ以上のポテンシャルだ。そして恐ろしく静かに大地を駆け抜けるギャップに、新しい時代を感じた。

こうしたポテンシャルの高さが、現実ではどのように生かされるのか? 雪上路面で言えば、それはひとえに運転のしやすさだ。

アクセル開度に対してレスポンス遅れなく、かつ適切なトルクを立ち上げることができる駆動制御は、雪道での緊張感を大いに和らげてくれたはずである。

とはいえオンロードにおける、スタッドレスタイヤを履いたeトロン・スポーツバックの走りは確認できたので、それを最後にお伝えすることとしよう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    山田弘樹

    Koki Yamada

    1971年生まれ。自動車雑誌編集部に在籍し、その後フリーランスに。編集部員時代にレースをはじめ、その経験をちょこっと活かして執筆活動中。でも、スピードの出るクルマは実は苦手です。2017年暮れに意を決して、憧れ続けた空冷ポルシェ911(993)を購入。消耗品の高さに都度涙を流しながらも、基本的には幸せ満喫中。最初はおっかなビックリだったけど、過走行でもポルシェは頑丈でした。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。

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